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  • 社員が辞めた本当の理由は、給料ではありませんでした

    社員が辞めた本当の理由は、給料ではありませんでした

    信頼していた社員が、辞める。

    会社を立ち上げたときから、一緒にやってきた人だった。

    そして、こう考えます。

    「給料が足りなかったのかな」

    「もっと待遇を良くしていれば」

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。実際に起きた退職を、社長本人と一緒に分解したことがあります。

    そこで出てきた答えは、待遇ではありませんでした。

    人を辞めさせるのは、曖昧さです。


    出てきたのは、この4つでした

    その社長が、自分で書き出した原因がこれです。

    • 雇用契約書、就業規則、歩合の規定が曖昧だった
    • 歩合が遅れていたことへの、説明が不足していた
    • 人事評価の制度が曖昧だった
    • リモートで働くときの行動指針が無かった

    全部、「決まっていなかった」という話です。

    給料が安かった、という項目は1つもありません。

    そして、もう1つ挙がっていました。

    「自分が何をしたいのか、なぜいろいろな方と頻繁に会っているのか。自分の行動について、もっと理解してもらう姿勢がなかった」

    社長が何をしているのか、社員には見えていなかった。


    想像した本音が、一番痛かった

    この社長は、退職した社員の立場になって、その人が何を思っていたかを書き出しました。

    出てきたのが、これです。

    「もっと早い段階で、歩合についての説明をしてほしかった。社長は飲みに行ったりゴルフに行ったりしているのに、私への歩合が遅れるというのは、どういうこと?」

    ……これ、読んだとき息が止まりました。

    言われたわけではありません。社長が自分で想像して書いた言葉です。

    でも、たぶん当たっています。

    そしてここが怖いところなんですが、この言葉は、辞めるまで一度も口に出されませんでした。


    数字が見えないと、人は想像で埋めます

    なぜ、こんなことが起きるのか。

    社員には、会社の中身が見えないからです。

    入金がいつあるのか。今月の資金繰りがどうなっているのか。社長が誰と会って何を進めているのか。

    何も見えません。

    そして人間は、見えない空白があると、想像で埋めます。

    歩合が遅れている。理由は説明されていない。でも社長は外で人と会っている。

    この3つが並んだとき、頭の中で何が起きるか。

    「後回しにされている」

    事実は違うかもしれません。その会食が来期の仕事につながる大事な席だったかもしれない。資金繰りの都合で、社長自身が身を削っていたかもしれない。

    でも、言わなければ伝わりません。

    そして伝わらない期間が長いほど、その人の中の物語は固まっていきます。


    「まぁいいか」の代償

    この社長には、もう1つの自覚がありました。

    自分の弱みとして、こう書いていました。

    • 会社の状況についての説明不足(入出金のタイミングなど)
    • コミュニケーション不足
    • モチベーションを上げるための声掛け不足
    • 雇用に対する知識不足
    • 「何とかなる」という、楽観が過ぎた

    最後の1つが、一番大きいと思います。

    「何とかなる」は、強みに見えます。動じない、腹が据わっている、細かいことを気にしない。

    でも裏を返すと、仕組みを作らない理由になります。

    契約書を整えるのも、評価制度を決めるのも、面倒です。今日の売上には1円もつながらない。だから後回しになる。

    そして「何とかなる」で先送りにしたぶんの請求書が、一番大事な人を失うという形で回ってきます。


    先に決めておくべき、5つのこと

    同じことを繰り返さないために、決めておくものは、そう多くありません。

    1. 雇用契約書
    2. 就業規則
    3. 歩合や賞与の規定(いつ、何を基準に、いくら)
    4. 人事評価の基準
    5. 働き方の指針(リモートを含む)

    どれも、地味です。作っても、誰も褒めてくれません。

    でも、この5つが決まっているだけで、想像で埋められる空白が消えます。

    そしてもう1つ、制度の話ではないものを。

    入出金のタイミングを、伝える。

    「今月は入金が◯日なので、支払いは◯日になります」

    これを言うだけで、まったく違います。遅れることが問題なのではなく、理由が分からないことが問題だからです。


    辞めた人は、警鐘です

    最後に、この話で一番大事なところを書きます。

    優秀な人が辞めるのは、組織へのアラームです。

    「もっと良くできることがある」というメッセージが、一番痛い形で届いている。

    それを、聞き入れて動くかどうかは、社長次第です。

    その社長は、動きました。書き出して、決めて、変えました。

    だから僕は、この退職は無駄にならなかったと思っています。一人失って、これから来る人たちを守れる形になったからです。

    痛いですが、そういうことだと思います。


    まとめ

    • 人を辞めさせるのは、待遇ではなく曖昧さ
    • 決まっていないと、社員は想像で空白を埋める
    • 想像は、たいてい悪いほうに固まる
    • 「何とかなる」は、仕組みを作らない理由になる
    • 決めるのは5つ。契約書・就業規則・歩合の規定・評価基準・働き方の指針
    • 入出金のタイミングを伝える。遅れることより、理由が分からないことが問題
    • 優秀な人の退職は、組織へのアラーム

    今日、1つだけ決めてみてください。全部でなくていいです。

    そして、人が離れていくとき「給料が安いからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

    あなたの案件が「どこで止まっているのか」は、無料の診断ツールで60秒でチェックできます。止まっている場所が分かると、次の一歩が見えてきます。

  • 社長が現場から抜けられない会社の、たった1つの共通点

    社長が現場から抜けられない会社の、たった1つの共通点

    朝、会社に行く。

    いつも通り、現場に出る。お客さんに会って、対応して、判断して、社員のフォローもする。

    そして、気づいたら1日が終わっている。

    新しいことをやりたい。次の柱を作りたい。そう思っているのに、その時間だけがいつまでも作れない。

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。この状態の社長は、本当に多いです。

    そして、原因はほぼ1つです。

    忙しいからではありません。任せる仕組みが無いだけです。


    ある社長の言葉

    先日、社員数名の会社を経営されている方から、こういう言葉を聞きました。

    「常に会社の状況を気にしないといけないし、できる限りオフィスにいないといけない。だから、全ての仕事のパフォーマンスが落ちるし、僕も次のステップに行けない」

    この方は、ちゃんと自覚しているんです。

    分かっているのに、抜けられない。

    これ、能力の問題ではありません。むしろ、優秀で面倒見のいい社長ほど、こうなります。


    抜けられない会社に、必ずあるもの

    こういう会社を見ていくと、共通して出てくる状態があります。

    社員が受け身になっている。

    その社長は、自分の会社をこう表現していました。

    • 成長が鈍化している
    • 他責の傾向がある
    • 自分事として捉えていない
    • 受け身

    厳しい言葉ですが、社長本人が書いたものです。

    そして、相談の中身も決まっています。

    「どうすればいいですか」

    自分の考えを持ってこない。答えを聞きに来る。

    そのたびに社長が答える。だから社長は現場から離れられない。離れられないから、社員はますます聞きに来る。

    この輪が、ぐるぐる回っています。


    面倒を見ているつもりが、逆でした

    なぜこうなるのか。

    その社長は、自分でこう気づきました。

    「一緒に接客や案内に同行することで、成長する機会を奪ってしまっている可能性もある」

    これ、自分で気づける社長はなかなかいません。

    同行するのは、優しさです。教えてあげたい、失敗させたくない、お客さんに迷惑をかけたくない。全部、正しい気持ちです。

    でも、その優しさが、相手の「考える筋肉」を使わせていません。

    人は、自分で考えて、自分でやってみて、はじめて自分事になります。横で答えを出してくれる人がいる限り、その回路は育ちません。


    だから、「あえてやらない」

    その社長が決めた打ち手が、これでした。

    今までサポートしていた部分を、あえてやらない。

    • 自分で考えさせる
    • どうしたほうがいいかを考えさせたうえで、ミーティングを重ねる
    • 毎週月曜に、一人ずつと話す

    突き放すのではありません。信じて任せる代わりに、伴走の場を週1で置く。

    この形なら、社員は自分で考えます。そして、行き詰まったら週1の場で相談できる。

    放置と、任せるは違います。その違いを作るのが、定期的に話す場です。


    相談の形も、変えました

    もう1つ、この社長が変えたことがあります。

    相談のルールです。

    これまでは「どうすればいいですか」でした。これからは、こうします。

    相談する前に、自分で考えた案を出してから。または、やってみてから相談する。

    たったこれだけです。

    でも、これを入れると全部変わります。相談が「答えをもらう場」から「考えを確かめる場」になるからです。

    そして社長の側にも変化があります。判断を全部引き受けなくてよくなる。確認するだけの立場に移れる。

    ここまで来て、はじめて現場から抜けられます。


    会社と、社長と、社員を切り離す

    この方が言っていた中で、僕が一番いいと思った言葉があります。

    「会社という法人格と、社長・社員を切り離す。社長は社長という役割。社員にも役割がある。社員の役割は、売上を上げてくること。社長の役割は、責任を取ること」

    家族経営のような会社ほど、ここが混ざります。

    会社の上に社長がいて、その下に社員がいる。上下でものを考えるから、社長が全部背負うことになる。

    そうではなくて、会社という器があって、それぞれが違う役割で乗っている。

    この見方に変えると、任せることが「丸投げ」でなくなります。その人の役割を返しているだけになる。


    抜けられない社長へ

    現場から抜けるのは、冷たいことではありません。

    社長が現場にいる限り、その会社の上限は、社長一人分です。

    社長が抜けて、社員が自分で判断できるようになった会社は、人数分の上限を持ちます。

    そして何より、社長が抜けないと、次の柱を作る時間が永遠に生まれません。

    今の売上を守るために、未来の売上を捨て続けている。抜けられない状態というのは、そういうことなんですよ。


    まとめ

    • 抜けられないのは、忙しいからではない。任せる仕組みが無いから
    • 社員が受け身なのは、答えをくれる人が横にいるから
    • 同行する優しさが、考える筋肉を使わせていない
    • あえてやらない。ただし、週1で話す場を置く
    • 放置と、任せるは違う。違いを作るのは定期的な場
    • 相談の前に、自分の案を出させる
    • 会社・社長・社員を、上下でなく役割で分ける
    • 社長が現場にいる限り、会社の上限は社長一人分

    まず、来週の月曜に30分だけ、一人と話す時間を取ってみてください。そこから始まります。

    そして、抜けられないとき「まだ社員が育っていないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

    あなたの案件が「どこで止まっているのか」は、無料の診断ツールで60秒でチェックできます。止まっている場所が分かると、次の一歩が見えてきます。

  • 学んでも成果が出ない人の、共通点

    学んでも成果が出ない人の、共通点

    講座を受けている。本も読んでいる。メモも取っている。

    なのに、去年と何も変わっていない。

    そして、こう思います。

    「まだ勉強が足りないんだ」

    そしてまた、次の講座を申し込む。

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方をサポートしてきました。この輪から抜けられない方に、いつも同じことを伝えています。

    足りないのは、勉強ではありません。


    まず、責めなくていいです

    先に言っておきます。これはやる気の問題ではありません。

    人には、動き方のタイプがあります。心理学では、大きく2つに分けます。

    全体型の人は、結論を急ぎます。ざっくりした話が聞ければ、それで動けます。細かい説明は、むしろ邪魔に感じる。

    詳細型の人は、ざっくりだと動けません。マニュアル、ステップ、具体的な指示。それがないと、体が動かない。物事を細かく細かく進めていくタイプです。

    だから「さあ、すぐ実践してください」と言われても、いきなりは動けない。

    これは怠けているのではありません。そういう作りになっているだけです。

    ただ、そのままだと、いつまでも動けません。だから作りを変えます。


    3割できたら、発射してください

    僕が500人に言い続けてきた言葉があります。

    3割で、発射する。

    多くの人は、50%、60%、70%まで持っていかないと動けません。

    でも、そこまで準備している間に、時代が動いてしまいます。

    やっと動こうと思ったときには、そのニーズがもう無くなっていたり、価値が下がっていたりする。準備している間に、市場のほうが変わっているんです。

    だから、3割でいい。3割できたら、まず出す。

    成功している人を見ていると、本当にこれです。

    教わってきたら、とりあえず誰かに試してみる。それが習慣になっています。

    そして、ここが大事なところなんですが。

    この差は、勉強ができるかどうかとは関係ありません。すごいノウハウを持っているかどうかとも、関係ない。

    出すか、出さないか。それだけです。


    「ここまでやらないとダメ」を、下げてください

    では、詳細型の人はどうすればいいか。

    新しい癖をつけるしかありません。

    詳細型の人には、無意識のマイルールがあります。

    「ここまでやらないと、出しちゃダメだ」

    これが80%のところに設定されている。

    だったら、そのラインを下げます。

    80%でないと動けない人は、まず50%で動いてみる。慣れてきたら、40%、30%と下げていく。

    不思議なもので、これをやると本当に変わります。


    考える前に、動かしました

    実際にあった話をします。

    僕がサポートしていた女性の方が、まさにこのタイプでした。

    全部学ばないと動けない。

    でも、じゃあ全部学んだら動けるのかというと、動けないんです。

    何でも細かく考えてしまう。

    「こうやったら、うまくいかないんじゃないか」

    「ああやったら、うまくいかないんじゃないか」

    やってもいないのに、結論をどんどん出してしまう。

    そして結果的に、行動が先延ばしになる。

    そこで僕は、ある方法を取りました。

    考える隙を与えないことにしたんです。

    「はい、これやってきて」

    「はい、次はこれやってきて」

    実践課題を、どんどん出しました。マイナス思考になる前に、行動させてしまう。

    すると、どうなったか。

    その人、変わりました。

    やることが癖づいて、どんどんできるようになって、仕事もたくさん取れるようになって、独立開業もうまくいきました。

    考え方を変えたのではありません。行動の順番を変えただけです。


    早く失敗したほうが、早く進みます

    もう1つ、3割で出したほうがいい理由があります。

    早く失敗できるからです。

    3割で出して、違ったと分かる。そうしたら、すぐ修正できます。戻る距離が短い。

    でも、80%、90%まで作り込んでから出すと、どうなるか。

    それをやったからといって、いきなり成功するわけではありません。そして「全然違うじゃん」となったとき、20%まで戻らないといけない。

    せっかく作り込んだものを、大きく壊すことになります。だから、余計に動けなくなる。

    もう1つ、忘れてはいけないことがあります。

    講座で聞く成功事例は、たくさんあります。「こうやったらこうなりました」という話。

    でも、それは他人の事例です。あなたの事例ではありません。

    自分の事例を作るには、まずやるしかないんですよ。

    3割で発射して、走りながらブラッシュアップしていく。この考え方を持っている人が、結果を出します。


    「全部学んだら、やります」

    ここまでは、自分の話です。ここからは、お客さんに言われたときの話をします。

    セールスの場面で、こう言われることがあります。

    「今こういうことをやっているので、それが終わったらやります」

    ……大体、来ません。

    これは冷たく言っているのではなく、事実として来ないんです。

    「全部学んだらやります」というのは、やらない理由を作っているだけだからです。

    だから僕は、こう聞き返します。

    「全部学び終わるのは、いつなんですか?」

    すると、大体こう返ってきます。

    「1年後くらいですかね」

    1年です。1年あれば、状況はまったく変わります。

    そして正直に言うと、こう言う方は、そのときいっぱいいっぱいなんだと思います。責める気はまったくありません。

    ただ、僕はそこで契約しません。すぐに終わりにします。

    もちろん、詳しくお話は伺います。そのうえで、無理に引っ張らない。待っていても来ない相手を待つのは、お互いの時間の無駄だからです。


    3回目で、快感に変わります

    最後に、僕がずっと信じている話をします。

    マインドマップを作ったトニー・ブザンさんから、直接教わったことです。

    人間は、1回目に失敗すると、すごいダメージを受ける。2回目も、傷つく。でも3回目になると、だんだん快感になってくる。チャレンジすることに、快感を覚えてくる。だから、3回目までは諦めるな。そうすると、脳が変わってくる。

    これを聞いてから、僕は信じてやり続けました。

    結果、自分が変わりました。

    だから今、塾生やクライアントの方には、必ずこれを伝えています。

    過去に一生懸命やって失敗して、傷ついた経験がある人ほど、動けなくなります。当たり前です。痛かったんですから。

    でも、その痛みが快感に変わる地点が、3回目にある。

    そこまで行けば、あとは勝手に動けるようになります。


    まとめ

    • 足りないのは勉強ではない
    • 動けないのはやる気の問題ではなく、詳細型という作りの問題
    • 3割で発射する。準備している間に、市場が変わる
    • 「ここまでやらないとダメ」のラインを下げる
    • 考える隙を与えない。行動の順番を変えるだけで人は変わる
    • 早く失敗したほうが、戻る距離が短い
    • 成功事例は他人のもの。自分の事例は、やらないと作れない
    • 「全部学んだらやります」は、やらない理由
    • 3回目で快感に変わる。そこまでは諦めない

    いま学んでいることの中で、3割できているものはありませんか。

    それ、今日出せます。

    そして、変われないとき「まだ勉強が足りないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

    あなたの案件が「どこで止まっているのか」は、無料の診断ツールで60秒でチェックできます。止まっている場所が分かれば、今日出すものも決まります。

  • 信じて待つのは、心の筋トレです

    信じて待つのは、心の筋トレです

    結果が、出ない。

    発信を続けているのに反応がない。クライアントが思うように動かない。

    そして、こう思い始めます。

    「これ、意味あるのかな」

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。そのうえで、はっきり言えることがあります。

    待つのと、諦めるのは、別物です。

    外から見ると、どちらも「何もしていない」に見えます。でも、中で起きていることは正反対です。

    そして待つほうには、力が要ります。


    あの2秒に、耐えられませんでした

    僕がこれを痛い形で学んだのは、セールスの場面です。

    最後のオファーをします。

    「これこれで、いくらです。いかがでしょうか」

    そして、相手が考える時間が生まれます。

    この時間、実際には2秒くらいです。

    もともと欲しいと思っていた人は、すぐ「やります」と言います。でも、そういう人ばかりではありません。10人いたら、半分もいないと思います。

    多くの人は、そこで少し止まる。躊躇や、ためらいがある。当たり前です。

    そして、その2秒を、僕は重く感じていました。

    苦しくなって、言葉を挟んでしまうんです。

    「どうですか」

    「やってみたいと思いませんか」

    「こういうふうになられるんですよ」

    ……相手が考えている最中に、です。

    結果、断られました。

    一度ではありません。何度もありました。


    何を言っても、相手の心は動かせません

    あとで振り返って、はっきり分かりました。

    僕が、我慢できなかっただけです。

    早く答えが欲しい。「やります」と言ってほしい。その焦りで、相手の思考を邪魔していた。

    そして、もっと大事なことに気づきました。

    僕が何を言ったところで、その人の心をコントロールすることはできません。

    「こう言ったら買ってくれるんじゃないか」

    そう考えている時点で、こちらは相手をコントロールしようとしています。

    そして、それは伝わります。焦りは必ず伝わる。伝わった瞬間に、相手は引きます。

    だから、心構えを変えました。

    伝えるべきことは、全部伝えた。あとは、答えを出すのはその人だ。

    そこは、僕にはどうにもできない領域です。

    同じ2秒でも、こう思えるようになると、まったく違うものになります。

    「今、この人は考えているんだな」

    それだけです。それだけで、セールスそのものが変わりました。


    「顔を出さないとダメですか」と聞かれました

    もう1つ、逆の話をします。待ちきって、化けた人の話です。

    これから結婚相談所を始めようとしていた女性の方でした。僕より年上の方です。

    その方には、はっきりした抵抗がありました。

    自分の顔を、外に出したくない。

    SNSに顔を出すのが嫌。発信で自分をさらけ出したくない。

    そして、こう聞かれました。

    「顔を出したりしないと、ダメですか」

    僕は、こう答えました。

    「出さなくても、大丈夫ですよ。それよりも、自分が出したいっていう気持ちに、これからなると思います」


    自信をつけさせようとは、しませんでした

    このとき、僕がやらなかったことがあります。

    その人に、自信をつけさせようとしませんでした。

    「大丈夫ですよ」「あなたならできますよ」と励ましても、たぶん何も変わりません。根っこが別のところにあったからです。

    顔を出したくない、発信したくない。この言葉の中身は、こうです。

    周りから、どう見られるかを気にしている。

    意識が、ずっと外に向いている。だとしたら、意識の向き先を変えないと解決しません。

    そこで、3ヶ月かけて、まったく別のことをやりました。

    その人自身が、本気で世の中に広げたいと思える商品を、徹底的に作り込む。

    一人でも多くの人に使ってほしい。これを使って幸せになってほしい。そう心から思えるサービスを作る。

    ひたすら、そこだけをやりました。


    卒業間際に、こう言われました

    そして、講座の卒業が近づいた頃です。

    その方から、突然こう言われました。

    「私、写真を出したいので、誰かカメラマンを紹介してください」

    僕は、こう返しました。

    「別に、無理に出さなくていいんですよ」

    すると、こう言われたんです。

    「もう、あの時のそういった気持ちではないんです」

    何が起きたか、分かりますか。

    外に出したくて、仕方なくなっていたんです。

    自分が愛せる商品ができた。だから、届けたい。届けるために顔が要るなら、出す。それだけの話になっていました。

    無理やり顔を出したところで、商品が売れるわけではありません。順番が逆だったんですよ。

    この方がやったのは、周りに反応するのをやめて、自分が何をやるべきかに反応することでした。


    卒業の日に、泣かれました

    その方は、卒業のときに僕の目の前で泣きました。

    「RYOさんに相談できないと思うと、心配で、どうしていいか分からないです」

    僕より年上の女性が、です。それだけ不安だったんだと思います。

    正直に言うと、僕もそのとき「この人、大丈夫かな」と思いました。

    でも、そこから2年後です。

    その方、クルーザーを買っていました。

    正直に言うと、まじかよ、と思いました。

    バシバシ顔を出して、どんどん発信して、お客さんを取って。あの「顔を出したくない」と言っていた人と、同じ人だとは思えませんでした。

    心のスイッチが入った瞬間に、行動も、価値観も、全部変わったんだと思います。今まで大事だと思っていたどうでもいいものを捨てて、前に進んでいった。


    そのクルーザーに、乗せてもらいました

    この話には、続きがあります。

    その方から誘っていただいて、僕はそのクルーザーに乗せてもらいました。

    東京湾を、水の上から走りました。ご主人も一緒でした。船の上から2人で釣りをして。

    そして最後は、ご自宅にお邪魔して、釣ったばかりの魚をさばいてもらって、夕食をご馳走になりました。

    卒業の日に、目の前で泣いていた人です。

    「相談できないと思うと、心配でどうしていいか分からない」と言っていた人が、数年後、自分の船に僕を乗せて、自分の家で僕にご飯を作ってくれている。

    この瞬間が、たぶん僕がこの仕事をしている一番の理由です。

    売上が上がったとか、クルーザーを買ったとか、そういう話ではありません。

    待った先に、こういう関係が残る。

    あのとき2秒待てずに押していたら、あるいは「顔を出さないとダメですよ」と正論を言っていたら、この船には乗っていません。


    「待つ」と「諦める」の分かれ目

    最後に、一番大事なことを書きます。

    待っているつもりが、いつのまにか諦めに変わることがあります。

    その分かれ目は、これです。

    「こうなる」と信じ続けているかどうか。

    諦めた瞬間に、待ったことにはなりません。ただ止まっているだけになります。

    そして、信じ続けるのは、気合いではできません。

    必要なのは、起きた出来事に、自分で意味をつけられることです。

    思うようにいかない日があります。断られる日もある。そのとき「やっぱりダメだ」と意味づけるのか、「今は考える時間なんだな」と意味づけるのか。

    良い意味づけを連続させられると、3ヶ月後の状態がまるで違います。

    これが、心の筋トレです。筋トレなので、やった分だけ強くなります。

    そして順番があります。まず自分を信じて待てるようになる。それができるようになって、はじめて人を信じて待てるようになります。


    まとめ

    • 待つのと諦めるのは別物。分かれ目は「信じ続けているか」
    • セールスの2秒に耐えられないと、自分で壊す
    • 何を言っても、相手の心はコントロールできない
    • 伝えることは伝えた。答えを出すのはその人
    • 自信をつけさせようとしない。意識の向き先を変える
    • 自分が愛せるものができると、人は勝手に出したくなる
    • 意味づけの力が、待つ力を作る。これが心の筋トレ
    • 待った先に残るのは、売上ではなく関係

    いま結果が出ていないなら、焦って手を出す前に、2秒だけ待ってみてください。

    そして、うまくいかないとき「自分の押しが足りないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

    あなたの案件が「どこで止まっているのか」は、無料の診断ツールで60秒でチェックできます。止まっている場所が分かれば、待つべきか動くべきかも見えてきます。

  • 貢献は、最初のたった一人から始まります

    貢献は、最初のたった一人から始まります

    目標を、大きく立てた。

    「年間100人サポートする」

    「月にこれだけの売上を作る」

    決めた瞬間は、やる気に満ちています。

    でも数日たつと、その数字を見るたびに固まるようになる。今日、何をすればいいのか分からない。

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。この状態の方に、いつも同じことを伝えています。

    1000人を考えるから、一歩が出ないんです。まず、たった一人から。


    実績が、何もありませんでした

    僕がこれを体で覚えた日の話をします。

    独立する前、僕は2年間、副業をしていました。会社には内緒で、マインドマップを教える講師の仕事です。

    僕を育ててくれた先生がいて、その方の会社で土日だけ登壇させてもらっていました。応援してくれていたんです。

    ただ、当時の僕には講師としての実績が、何もありませんでした。

    そこで先生から、こう言われました。

    「実績を、どんどん作りなさい」

    そして紹介してもらったのが、栃木県の保育園の研究会でした。保育士の先生たちに、マインドマップを教えてくる。

    会場に入ったら、60人いました。


    目の前は60人。でも、一人に向けて話しました

    さて、何を話すか。

    準備しながら、僕はずっと考えていました。

    そのとき、頭に浮かんだのは自分の娘のことでした。

    当時、僕は離婚していました。娘はまだ小さくて、毎週会いに行っていました。

    会うたびに、娘がまっすぐ成長しているのが分かる。

    そこで、ふと思ったんです。

    この成長は、僕一人が作ったものじゃない。

    僕が知らないところで、保育園のどこかの先生が、一生懸命やってくれている。会ったこともない誰かが、娘を毎日見てくれている。

    その人に、感謝を伝えよう。

    そう思って、この仕事を引き受けました。

    目の前にいるのは60人です。でも、僕が伝えようと思っていた相手は、その中にはいない一人でした。

    娘を見てくれている、会ったこともない先生。その人に向けて、4時間の講義をしました。


    最後に、手紙を読みました

    不思議なことに、ものすごく盛り上がりました。

    自分でも驚くくらいでした。

    そして最後に、僕は1つだけ用意していたものを出しました。

    いつも頑張ってくれている先生たちへの、感謝の手紙です。

    それを読みました。

    そうしたら。

    60人の先生が、全員、号泣しました。

    会場中が、です。


    なぜ、あんなに泣いたのか

    あとで考えて、分かったことがあります。

    世の中には、先生に文句を言う人がたくさんいます。保育の現場に対して、厳しい声はいくらでもある。

    でも、感謝している親も、同じくらいたくさんいる。

    そのことが、あの人たちには届いていなかったんです。

    4時間、一緒に過ごしてみて、先生たちの不満やストレスも、よく分かりました。楽な仕事ではまったくない。

    でも、それ以上に分かったことがあります。

    この人たちは、本当に子どもを愛している。

    その愛があるからこそ、続けられている仕事なんだと、あの日はっきり実感しました。

    僕にとって、目の前の60人は、直接の関係がある人ではありません。娘を見てくれている先生でもない。

    でも、日本のどこかで子どもを支えてくれている人たちなんです。

    その人たちに感謝を伝えたい、という気持ちだけで、あの4時間はできていました。


    100人を取ろうとすると、一人も来ません

    ここから、僕がずっと使っている考え方が生まれました。

    一人にやったつもりが、100人になる。

    これは本当にそうなんです。あの日、僕は一人に向けて話したのに、60人が動きました。

    そして、逆も本当です。

    100人を取ろうと思ったら、一人も来ません。

    なぜかというと、こういう順番になっているからです。

    一人の心を動かせない人は、10人の心も動かせない。

    10人が動かなければ、100人も動かない。

    一人が動けば、10人が動く。10人が動けば、100人が動く。

    順番は、絶対に飛ばせません。

    だから、最初にやることは1つです。

    目の前の一人を、本気でサポートする。

    そこに誠心誠意、真心を込めて、愛を込めて伝える。それしかありません。


    お金のためだけだと、たぶん届きません

    もう1つ、あの日に気づいたことがあります。

    お金のために一生懸命やる。それも、もちろん大事です。仕事ですから。

    でも、あの4時間を作っていたのは、それではありませんでした。

    自分の知らないところで、誰かを助けてくれている人がいる。

    その人を励ますことで、めぐりめぐって、みんなが良くなっていく。

    この感覚があると、話す言葉が変わります。テクニックではなく、たぶん温度が変わるんだと思います。

    そして受け取る側は、そこを敏感に感じ取ります。


    まとめ

    • 数が大きいと、人は動けなくなる
    • まず、たった一人から
    • 目の前に何人いても、メッセージは一人に向けて出す
    • 一人にやったつもりが、100人になる
    • 100人を取ろうとすると、一人も来ない
    • 順番は飛ばせない。一人→10人→100人
    • お金のためだけだと、温度が乗らない

    いま目標が大きすぎて止まっているなら、こう考えてみてください。

    その一人は、誰ですか。

    顔が浮かんだなら、今日やることは決まっています。

    そして、動けないとき「自分の目標設定が甘いからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

    あなたの案件が「どこで止まっているのか」は、無料の診断ツールで60秒でチェックできます。止まっている場所が分かれば、次の一歩も見えてきます。

  • 昨日の自分を、1ミリだけ超える

    昨日の自分を、1ミリだけ超える

    うまくいっていないとき、人はこう考えます。

    「何か大きく変えなきゃ」

    新しいことを始めよう。ガラッと方針を変えよう。今のままではダメだ。

    そして、その「大きさ」に押し潰されて、結局何もできないまま1日が終わります。

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。そして、僕自身がそこで止まったことがあります。

    必要なのは、大きく飛ぶことではありません。1ミリです。


    会社の口座が、909円になりました

    コロナのときの話をします。

    あの時期、僕の仕事は全部止まりました。

    コンサルティングも、企業研修も、すべてキャンセル。人が集まれないので、当たり前です。

    そして、僕はある判断をしました。

    すでにお支払いいただいていたぶんを、全額お返ししたんです。

    契約上は、返す義務はありませんでした。でも、こちらが提供できていないのに手元に置いておくのは、どうにも気持ちが悪かった。

    それで、返しました。

    その結果、どうなったか。

    会社の口座残高が、909円になりました。

    ……もう、笑うしかなかったです。本当に。


    コロナのせいにしても、何も解決しませんでした

    そのとき、頭に浮かんだことがあります。

    これは、自分ではコントロールできない。

    コロナが来たことも、人が集まれなくなったことも、僕がどれだけ頑張っても、どうにもなりません。

    だから、こう思うこともできました。

    「コロナのせいだ」

    「あのお客さんが急にキャンセルしたせいだ」

    でも、はっきり分かっていたことがあります。

    そう言ったところで、口座は909円のままだ。

    誰かのせいにするのは、気持ちは楽になります。でも、現実は1ミリも動きません。

    だから、考え方を変えました。

    コントロールできないものは、置いておく。今できることをやる。


    やったのは、振り返ることだけでした

    では、何をしたか。

    大げさなことは、何もしていません。

    これまで自分がやってきたことを、もう一度全部振り返りました。

    何が足りなかったのか。どこで手を抜いていたのか。この状況になって、何が求められるようになったのか。

    派手な打ち手ではありません。誰かに見せられるようなことでもない。

    ただ、今日できることを1つやる。それだけを繰り返しました。

    大きくジャンプしようとすると、助走の距離が要ります。そして助走している間に、心が折れます。

    でも1ミリなら、今日の自分でも越えられる。

    前向きな気持ちというのは、そこから出てきます。「明日から本気を出す」ではなく、「今日ここを1ミリ」。この差は、思っているより大きいです。


    すぐには、良くなりませんでした

    正直に書いておきます。

    1ミリ進んだからといって、翌日に何かが起きるわけではありません。

    口座は909円のまま、しばらく動きませんでした。今日1つやって、明日も1つやって、それでも数字は変わらない。

    そういう時期が、確かにありました。

    でも、そこからです。

    1ヶ月ほどで、仕事がじわじわと戻ってきました。

    少しずつ、本当に少しずつ。そして気づいたら、300万円ほどが入ってきていました。

    正直に言うと、まじかよ、と思いました。あの909円から、そんなに時間はかかっていなかったんです。


    一番の収穫は、お金ではありませんでした

    300万円という数字だけ見れば、経営していれば普通のことです。特別な金額ではありません。

    でも、あのときの僕にとっては、まったく違う意味がありました。

    得たものが、3つあります。

    1つめ。お金の大事さを、体で味わいました。頭では分かっていたつもりでした。でも、違いました。

    2つめ。自分の志を、考え直しました。何のためにこの仕事をしているのか。誰をどうサポートしたいのか。順調なときには、ここまで真剣に考えません。

    そして、3つめが一番大きいです。

    お金がなくて、夜眠れない。

    これを、僕は初めて経験しました。それまでの人生で、なかったんです。

    天井を見ながら、朝が来るのが怖い。あの感覚を、身をもって知りました。

    そして、こう思いました。

    ああ、これがあの人たちが感じていたことなのか。

    相談に来られる経営者の方の中には、この状態の方がいます。それまで僕は、その話を「理解している」つもりでいました。

    分かっていませんでした。

    あの夜を過ごしてから、同じ話を聞いたときの受け取り方が変わりました。相槌ひとつ、間の取り方ひとつが変わったと思います。

    結局、あの時期に得たものは、全部プラスに動きました。

    苦しかったのは間違いありません。でも、今から振り返ると、あれは良い時間だったと言えます。


    1ミリの本当の意味

    最後に、これだけ伝えたいです。

    1ミリというのは、「小さく頑張れ」という話ではありません。

    まず、今の現実を受け入れる。

    909円なら、909円だと認める。そこを誤魔化さない。良く見せようともしない。

    そのうえで、そこから一歩進む。

    このとき、「大きく進まなきゃいけない」と思うから、足が止まります。

    1ミリでいいと思えた瞬間に、はじめて足が出ます。

    そして、1ミリ進んだ場所から見える景色は、昨日とは違います。違う景色が見えると、次の1ミリが少し楽になる。

    その繰り返しです。


    まとめ

    • 大きく変えようとするから、動けなくなる
    • コントロールできないものは、置いておく
    • 誰かのせいにすると気は楽になるが、現実は1ミリも動かない
    • やることは、これまでを振り返って、今日できることを1つ
    • すぐには良くならない。1ミリ進んでも、しばらく数字は動かない
    • そこから1ヶ月で、じわじわ戻ってきた
    • 一番の収穫はお金ではなく、眠れない夜を知ったこと
    • まず現実を受け入れる。そこから1ミリ

    今日、大きく変える必要はありません。1ミリだけ、昨日を超えてください。

    そして、うまくいかないとき「もっと大きく動かないとダメだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

    あなたの案件が「どこで止まっているのか」は、無料の診断ツールで60秒でチェックできます。止まっている場所が分かれば、次の1ミリも見えてきます。

  • 数字は、奇数のほうが信じられます

    数字は、奇数のほうが信じられます

    見出しやキャッチコピーに、数字を入れましょう。

    そう言われて、こう書いた経験はありませんか。

    「成功する4つのポイント」

    「押さえておきたい6つの視点」

    きれいに揃っていて、収まりがいい。悪くないと思いますよね。

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。そのうえで言えることがあります。

    偶数は、安心を与える数字です。

    そしてセールスやオファーの場面で、安心はいりません。


    切りが良い、が落とし穴です

    なぜ偶数だとまずいのか。

    4、6、8。こういう数字は、閉じている感じがします。

    きちんと揃っている。過不足がない。だから安心する。

    安心すると、どうなるか。

    「ふーん」で終わります。

    人が動くのは、安心したときではありません。「なんだろう」と思ったときです。

    3、5、7。この数字は、なぜか少し引っかかります。割り切れないからか、収まりが悪いからか、理由はうまく説明できません。でも、続きを見たくなる。

    セールスの場面で必要なのは、安心ではなく好奇心なんですよ。


    中吊り広告を、数えていました

    これは、僕が起業したての頃にやっていたことです。

    まだ何も分からなくて、とにかく「うまくいっているもの」を観察しようと思っていました。

    そこで何をしたか。

    電車の中吊り広告を、ひたすら見ていました。

    街を歩けば看板を見て、本屋に行けばタイトルを見て、雑誌の見出しを見て。片っ端から分析していたんです。

    すると、あることに気づきました。

    3、5、7が、圧倒的に多い。

    「ほんとだ!」と思いましたね。

    誰かに教わったわけではありません。実際に世の中に出ているものが、そうなっていた。プロがお金をかけて作ったものが、揃って奇数を使っている。

    これは、けっこう衝撃でした。


    じゃあ、奇数を入れれば完璧か

    ここで、大事な話をします。

    違います。

    奇数さえ入れれば効くというなら、みんなとっくにやっています。

    言葉と数字は、必ずセットです。

    言葉というのは、キャッチコピーの部分のこと。

    刺さる言葉があって、そこに好奇心を盛り上げる数字が乗る。この順番で、はじめて効きます。

    逆にいうと、言葉が弱いのに数字だけ足しても、何も起きません。

    「頑張るための3つのポイント」

    ……何も響きませんよね。数字は奇数なのに。

    言葉のほうが空っぽだからです。数字は、あくまで乗せるものであって、土台ではありません。


    「かなり上がりました」を、言い換えた日

    数字の力を、僕が体で分かった瞬間があります。

    セミナーの冒頭で、自己紹介をするときの話です。

    当時、僕はこう言っていました。

    「起業当初は自分の時給が安かったんですが、今では、かなり上がりました!」

    嘘は言っていません。事実です。

    でも、ある時これを言い換えました。

    「起業当初は時給500円でした。でも、今は、有難いことに7万円まで向上させることができました!」

    言っている中身は、まったく同じです。

    でも、セミナーのスタートの雰囲気がガラッと変わりました。

    空気が締まる、というんでしょうか。ざわっとする感じがある。今でもはっきり覚えています。

    「かなり上がった」だと、聞いた人が絵を描けないんですよ。1万円かもしれないし、2千円かもしれない。

    「500円が7万円」と言われた瞬間、頭の中に絵が浮かびます。

    数字の力って、本当にすごいです。


    「かなり」を、探してください

    この話には、すぐ使える形があります。

    自分の原稿を開いて、この言葉を探してください。

    • かなり
    • たくさん
    • 大幅に
    • 多くの
    • 短期間で

    こういう言葉が出てきたら、そこが数字に変えられる場所です。

    「多くの方にご利用いただいています」→「300名の方に」

    「短期間で成果が出ます」→「3日で」

    「大幅に改善します」→「1.5倍に」

    やっていることは、ぼんやりした言葉を、絵が浮かぶ言葉に変えているだけです。

    そして、ここで1つ大事なことがあります。

    盛らないでください。

    数字が効くのは、本当だからです。300名と書いて、実は30名だったら、どこかで必ず崩れます。そして一度崩れた信用は戻りません。

    正直な数字が、地味でもかまいません。「5名の方に」でもいいんです。ぼんやりした「多くの方に」より、はるかに強い。

    ただし、隠しスパイスです

    最後に、注意点を1つだけ。

    これを知ると、数字を入れたくなります。あちこちに入れたくなる。

    やめてください。

    数字ばかり入れると、嫌がられます。

    「3つの秘訣」「5つの法則」「7日間で」「98%が」「たった180日」

    全部入れたら、どうなるか。通販番組みたいになります。そして人は、その手のものに慣れきっていて、身構えます。

    数字は、隠しスパイスです。

    料理と同じで、隠し味だから効きます。全面に出したら、それはもう料理ではありません。

    僕の感覚だと、1つの原稿に1〜2か所。それも、一番聞いてほしいところにだけ置く。

    そこだけ数字があると、そこが際立ちます。


    まとめ

    • 偶数は安心を与える。セールスの場面で安心はいらない
    • 必要なのは好奇心。3・5・7は、なぜか続きを見たくなる
    • 世の中の広告は、実際に奇数だらけ。中吊りを見れば分かる
    • 奇数を入れれば効く、ではない。言葉と数字は必ずセット
    • 言葉が空っぽなら、数字を足しても何も起きない
    • 「かなり」を数字に変えると、相手の頭に絵が浮かぶ
    • 数字は隠しスパイス。1つの原稿に1〜2か所まで

    いま書いている原稿に、「かなり」「たくさん」「大幅に」が入っていませんか。

    そこを1つだけ、数字に置き換えてみてください。それだけで、伝わり方が変わります。

    そして、言葉が響かないとき「自分にセンスがないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

    あなたの案件が「どこで止まっているのか」は、無料の診断ツールで60秒でチェックできます。自分の現在地が分かると、次の一歩が見えてきます。

  • 客をなめると、既存客から逃げていきます

    客をなめると、既存客から逃げていきます

    新規のお客さんを探し続けている。

    来てくれた人は、終わったらそれっきり。

    そしてまた、次の新規を探しにいく。

    この走り方、いつまで続けるつもりでしょうか。

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。走り続けて疲れている方に、いつも同じことを伝えています。

    すでにいる人を大事にしないと、自分の看板が安くなります。


    「解約します」と言った瞬間に出てくるアレ

    分かりやすい例があります。

    携帯会社です。

    長く使っていても、特に何もありません。ところが「解約します」と言った瞬間、こう言われる。

    「今なら、キャッシュバックがありますが」

    ……あれ、どう感じますか。

    僕は、こう思います。

    「そのタイミングで言うか」

    長く払い続けてきたときには何も言わなかったのに、出ていくと言った瞬間にお金を出してくる。

    これ、何を言っているかというと、こういうことです。

    「あなたは3万円で動く人ですよね」

    客をなめているんですよ。

    しかも、当の会社は自覚がありません。「引き止め施策」として、真面目にやっている。でも受け取る側には、はっきり伝わります。

    そして、一度そう感じた相手のところには、二度と戻りません。


    マツダがやっていること

    逆の例も見てみます。

    マツダは、長年その車に乗り続けている人だけを集めた、感謝のイベントをやっています。

    限定のTシャツが配られて、招待される。

    参加した人は、どう感じるか。

    「ちゃんと見てくれていたんだ」

    心が、ぎゅっとなります。

    そしてその人は、次もマツダに乗ります。しかも、聞かれてもいないのに人に勧めます。

    一方、10年使い続けている通信会社が、こちらに何かしてくれた記憶はありますか。

    たぶん、ありませんよね。

    この差は、金額ではありません。「見ているかどうか」の差です。


    個人には、大企業にできないことができます

    ここからが本題です。

    大企業がなぜ既存客を大事にできないかというと、稟議が要るからです。

    「長年のお客様に、何か特別なことをしたい」と思っても、企画書を書いて、承認を取って、公平性を検討して、コストを計算して……とやっているうちに、当たり障りのないものになります。

    個人事業や小さい会社は、これが要りません。

    思いついた瞬間に、やれます。

    • 誕生日に、電話を1本かける
    • ちょっとした粗品を送る
    • 高齢のお客さんに、2週間おきに様子をうかがう電話をする

    どれも、お金はほとんどかかりません。そして、大企業には絶対に真似できません。

    これをやっていると、どうなるか。

    他に取られなくなります。

    もっと安いところが出てきても、もっと大きいところが来ても、その人は動きません。価格で選ばれていないからです。

    人で選ばれている関係は、価格競争の外側にあります。


    何をすれば、ファンになるのか

    「具体的に何をすればいいのか」と聞かれるので、書いておきます。

    特別なことは、何もしなくていいです。

    やることは1つだけ。

    用がないときに、連絡する。

    これだけです。

    売り込みでも、案内でもなく、ただ思い出したから連絡する。

    「そういえば、あのお話どうなりましたか」

    「この記事を読んで、◯◯さんのことを思い出しました」

    用があるときにしか連絡してこない人は、営業です。用がないときに連絡してくる人が、知り合いです。

    そして人は、営業からは最安値で買いますが、知り合いからは適正価格で買います。

    もう1つ。覚えていることを、口に出す。

    前に聞いた話を覚えていて、それに触れる。「お子さん、受験でしたよね」「あの案件、通りましたか」。

    たったこれだけで、相手は「この人は自分を見てくれている」と感じます。

    覚えるのが苦手なら、メモしておけばいいだけです。記憶力の話ではなく、記録する気があるかどうかの話なんですよ。

    ただし、自分が整っていないとできません

    正直に言うと、これは技術の話ではありません。

    自分の状態がそのまま出ます。

    心の中で不満を抱えたまま「誕生日に電話しよう」と思っても、相手には伝わってしまいます。「営業だな」と分かってしまう。

    逆に、こちらが満たされていると、自然と相手のことを思い出せるようになります。

    だから僕は、いつも順番をこう考えています。

    自分を整える → 人を思い出せるようになる → 関係が続く

    やることリストを増やすより、まず自分の状態を見る。遠回りに見えて、これが一番早いです。


    特別を、全員に配らないでください

    最後に、1つだけ注意点を。

    うまくいき始めると、こう考えたくなります。

    「せっかくいい取り組みだから、全員にやろう」

    これ、やめてください。

    特別扱いを全員に開放した瞬間、特別が特別でなくなります。

    そして一番先に離れるのが、それまで特別扱いされていたコアなお客さんです。「自分だけだと思っていたのに」となる。

    一番大事にしたかった人を、一番傷つけることになります。

    誰にやって、誰にはやらないか。ここも、線を引いてください。


    まとめ

    • 既存客を軽んじると、自分の看板が安くなる
    • 出ていくと言われてから出す条件は、「なめている」と伝わる
    • 差は金額ではなく、「見ているかどうか」
    • 個人は稟議がないから、思いついた瞬間にやれる
    • 人で選ばれた関係は、価格競争の外側にある
    • 自分が整っていないと、この目線は持てない
    • 特別を全員に配ると、コア客から離れていく

    新規を探す時間を、少しだけすでにいる人に回してみてください。

    そして、走り続けて疲れているとき「まだ努力が足りないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

    あなたの案件が「どこで止まっているのか」は、無料の診断ツールで60秒でチェックできます。自分の現在地が分かると、次の一歩が見えてきます。

  • 取りたくない客を、先に決めてください

    取りたくない客を、先に決めてください

    来た人は、断らない。

    そう決めている方が、多いと思います。

    とくに始めたばかりの頃は、選べる立場ではないと感じますよね。1件でも取りたい。

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。そのうえで、はっきり言えることがあります。

    がむしゃらに取った客で、うまくいった人を見たことがありません。

    一人もいません。


    直感は、もう答えを知っています

    こういう瞬間、ありませんか。

    話していて、「あ、この人とは合わないな」とふっと感じる。

    理由はうまく言えない。相手が悪いわけでもない。でも、何かが引っかかる。

    そのあと、頭がこう言い出します。

    「でも、これだけの金額になるし」

    「ここで断ったら、次いつ来るか分からないし」

    「話せば分かってくれるかもしれないし」

    これ、全部お金の理屈なんですよ。

    直感のほうは、最初から答えを出しています。合わない、と。

    でも頭が、メリットだけを並べて「取れ」と言ってくる。そして、たいていそっちに従ってしまう。

    そして半年後、後悔します。


    合わない人を1人入れると、場が変わります

    なぜ、そこまで言うのか。

    1人で完結しないからです。

    僕は塾やコミュニティも運営していますが、そこに1人「持っているものが違う人」が入ると、場の空気そのものが変わります。

    その人が悪意を持っているわけではありません。ただ、向いている方向が違う。

    すると、周りの人が気を遣い始めます。発言が慎重になる。本音が出なくなる。

    一番損をするのは、ちゃんとやろうとしている他の人たちです。

    僕がその1人を取ったせいで、9人の場が薄くなる。これは、経営判断として明らかに間違っています。


    「お金がない」は、そのままの意味です

    もう1つ、線引きが必要なところがあります。

    これは書くのに少し勇気が要りますが、大事なので書きます。

    お金がない人は、ないんです。

    「今は厳しいけど、なんとかします」と言われて、なんとかなった人は、正直ほとんどいません。

    そして、ここが大事なところなんですが。

    起業する前から、お金がなくて悩んでいる。その状態で始めていること自体に、たぶん無理があります。

    そういう方に対して、僕も昔は「どうにかしてあげたい」と思って、必要以上に手を出していました。値段を下げたり、期間を延ばしたり、無料で見てあげたり。

    結果どうなったか。

    時間だけが消えて、お礼も言われませんでした。

    これは相手が悪いのではありません。受け取る準備ができていない人に、渡そうとした僕の判断ミスです。


    「助けたい」と「線を引く」は、両立します

    ここで誤解してほしくないので、はっきり書きます。

    助けたい気持ちで動くこと自体は、正しいです。

    損得を横に置いて、目の前の人に与える。これは僕がずっと大事にしていることですし、結果的にそういう人のところに仕事が集まります。

    線を引くのは、それとは別の話です。

    • 合わないと直感が言っている相手
    • お金の準備がまったくできていない相手

    この2つだけ、線を引く。それ以外は、思いきり与えていい。

    線を引くのは冷たさではなく、思考した結果です。

    そして、線を引けるようになると不思議なことが起きます。本当に助けたい人に、時間とエネルギーを全部使えるようになるんですよ。


    断ったあとに、何が起きるか

    線を引くのが怖いのは、断ったら何もかも失う気がするからだと思います。

    実際に起きることを書いておきます。

    まず、時間が空きます。当たり前ですが、これが大きい。合わない相手にかけていた時間とエネルギーが、まるごと戻ってきます。

    そして、その空いた場所に、なぜか別の話が入ってきます。

    僕はこれを何度も見ています。合わないお客さんとの契約を終わりにすると決めた翌日に、新しい出会いが来る。タイミングが良すぎて、最初は偶然だと思っていました。

    でも、説明はつきます。空いた場所にしか、新しいものは入らないからです。抱えたままでは、物理的に受け取れません。

    もう1つ。断れる人は、態度が変わります。

    「この人は誰でも受けるわけじゃない」と伝わると、相手の接し方が変わります。値切られにくくなるし、雑に扱われなくなる。

    選ばない人は、選ばれません。これは人間関係の全部に言えることだと思います。

    取らない客も、書き出してください

    実務としてやってほしいのは、これです。

    ターゲットを決めるとき、取らない客も書き出す。

    • こういう人は受けない
    • こういう言い方をする人は受けない
    • この条件が揃っていない人は受けない

    絞り込みと同じくらい、こちらも大事です。

    書き出しておくと、迷ったときにその場の感情で判断しなくて済みます。

    「なんとなく気が進まないけど、まあいいか」が一番危ない。先に決めておけば、その瞬間に決めなくていい。

    そして、断るときは正直でいいです。

    「ご期待に応えられないと思うので、お受けしないほうがいいと思います」

    これで嫌われることは、ほとんどありません。むしろ、その正直さで後から紹介が来ることすらあります。


    まとめ

    • がむしゃらに取った客で、うまくいった人はいない
    • 直感はもう答えを知っている。頭がお金の理屈で上書きしてくる
    • 合わない人を1人入れると、場全体が薄くなる
    • お金がない人は、ない。必要以上に手を出しても、時間が消えるだけ
    • 「助けたい」と「線を引く」は両立する
    • 取らない客も、先に書き出しておく

    全部受けるのをやめると、本当に届けたい人に、全部を渡せるようになります。

    そして、疲れているとき「自分の力が足りないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

    あなたの案件が「どこで止まっているのか」は、無料の診断ツールで60秒でチェックできます。自分の現在地が分かると、次の一歩が見えてきます。

  • 「カツ丼税理士」に学ぶ、専門性の尖らせ方

    「カツ丼税理士」に学ぶ、専門性の尖らせ方

    ターゲットを絞りましょう、と言われる。

    頭では分かる。でも、怖い。

    狭くしたら、その分お客さんが減るじゃないか。

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。この不安は、ほぼ全員が通ります。

    そして、ほぼ全員が同じところで納得します。

    絞ると減る、は逆です。絞らないから、誰にも見つけてもらえないんです。


    「うまい醤油ラーメンが食べたい」とき、どこへ行きますか

    想像してみてください。

    今日は無性に、うまい醤油ラーメンが食べたい。

    そういうとき、ガストには行きませんよね。

    ガストのラーメンがまずいわけではありません。ちゃんとしています。でも、行かない。

    なぜかというと、専門店のほうがうまいに決まっている、と無意識に思っているからです。

    これ、人がものを選ぶときに毎回やっていることです。

    人は、無意識に専門性の高い人を探しています。

    そして「何でもできます」と書いてある人は、その探し方の網に引っかかりません。

    減っているのではなく、そもそも見つけられていないんです。


    「カツ丼専門の税理士です」

    税理士さんの例で考えてみます。

    「何でもできる税理士です」

    ……何も残りませんよね。世の中に何万人といます。

    では、これならどうでしょう。

    「寿司屋専門の税理士です」

    「カツ丼屋専門の税理士です」

    急に、頭に絵が浮かびませんか。

    そして、ここが面白いところなんですが。

    カツ丼屋さんが、この人を見つけます。

    さらに、ラーメン屋さんも「近いかも」と思って連絡してきます。定食屋も、そば屋も。

    人は、自分に近いものを勝手に関連づけるからです。

    「カツ丼専門」と書いてある人を見て、うちは違うからやめておこう、とはあまり思いません。むしろ「飲食のことが分かっている人だ」と受け取ります。

    つまり、絞ったことで狭くなるのは看板だけで、来る人の幅は思ったほど狭くならない。


    好きなもので尖らせてもいい

    もう1つ、別の尖り方もあります。

    たとえば、プロレスが好きな税理士さんが、こう名乗る。

    「タイガーマスク税理士です」

    業種で絞っているわけではありません。でも、これも立派なポジションです。

    プロレス好きの経営者が、必ず食いつくからです。そして、その人はもう他の税理士を探しません。

    尖らせ方は、業種でも、趣味でも、地域でも、価値観でもいい。

    大事なのは、何かの一点で「あ、この人だ」と思われることです。


    誰にも受けない人は、どこへ行っても受けません

    絞るのが怖い一番の理由は、これだと思います。

    「もし誰にも刺さらなかったらどうしよう」

    正直に言います。

    尖らせて誰にも受けなかった人は、尖らせなくても受けません。

    これは意地悪で言っているのではありません。

    万人に向けた言葉は、誰の心にも引っかかりません。引っかからないものは、良いも悪いも判断されない。つまり、結果すら返ってこない。

    尖らせると、少なくとも反応が返ってきます。「合わないな」と離れる人も出ますが、「それ、私のことだ」と言う人が必ず一人は出ます。

    そして仕事は、その一人から始まります。

    何も返ってこない状態より、はっきり断られるほうが、はるかに前に進んでいます。


    絞るのは、看板だけでいい

    もう1つ、誤解を解いておきます。

    絞るというのは、他の仕事を断ることではありません。

    看板に何を書くか、という話です。

    「カツ丼屋専門」と名乗っている税理士さんが、たまたま来た美容室の依頼を断るかというと、断りません。普通に受けます。

    看板は入り口であって、鍵ではないんですよ。

    多くの人が絞れないのは、ここを取り違えているからです。「絞ったら、それ以外を受けられなくなる」と思っている。

    そんなことは起きません。入り口を1つに決めるだけです。

    そして、入り口が1つのほうが人は入ってきます。玄関がどこにあるか分からない家には、誰も来ませんから。

    いつ広げるか

    「じゃあ、いつまで絞っていればいいのか」

    これもよく聞かれます。

    答えは、その一点で名前が知られてからです。

    「◯◯といえば、あの人」という状態を作れたら、そこから横に広げていい。すでに信用の土台があるので、次のものも受け入れられます。

    順番が逆だとうまくいきません。知られていない状態で広げると、ただの「何でも屋」になります。

    NIKEがランニング以外に手を広げたのも、ランニングで名前が立ってからでした。

    相手が違えば、自己紹介も分けてください

    もう1つ、実務的な注意点があります。

    対象が違うなら、自己紹介を分けてください。

    これ、混ぜている人がとても多いです。

    個人のお客さん向けの話と、士業や経営者向けの話。1つの原稿で両方に届かせようとする。

    でも、個人向けの言葉は、弁護士には響きません。逆もそうです。刺さる痛みが、そもそも別物だからです。

    だから、行く場所によって出すものを変える。中身は同じでも、言葉と例を入れ替えるだけでかまいません。

    そのためには、相手を徹底的に知る必要があります。

    その人は、どんな生活をしているか。何を読んでいるか。何にお金を使っているか。どこで情報を得ているか。

    ここまで分かって、はじめてどの言葉で、どこに置くかが決まります。


    まとめ

    • 絞ると減る、は逆。絞らないから見つけてもらえない
    • 人は無意識に専門店を探す。「何でもできます」は網に引っかからない
    • 絞っても、近い人が勝手に関連づけて来る
    • 尖らせ方は業種でも趣味でもいい。一点で「あ、この人だ」と思われること
    • 尖らせて受けない人は、尖らせなくても受けない
    • 対象が違うなら、自己紹介を分ける

    怖いのは分かります。でも、怖いということは、ちゃんと尖っているということでもあります。

    そして、選ばれないとき「まだ実力が足りないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

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