社員が動かない。
会社の空気が、なんとなく重い。
何を言っても、跳ね返ってこない。
僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。こういうとき、社長さんは決まって社員のほうを見ます。
でも、先に見てほしい場所があります。
社員は、社長の言葉ではなく、社長の状態を見ています。
落ち込んでいた1か月
ある社長さんが、信頼していた社員に辞められました。
そのあとの1か月を、ご本人がこう振り返っています。
この1か月は、少し後ろ向きな言動が増えてしまった気がする。
正直な一行です。
そして、ここが大事なのですが、この1か月、社員は全部それを見ています。
社長が何を言ったかではありません。どんな顔で会社に来て、どんな声で話していたか。それを毎日見ています。
社長が後ろ向きだと、会社全体が後ろ向きになります。これは、気合いや根性の話ではなく、そういうものだと思ってください。
そこで、この方が選んだこと
普通なら、社員をどうするかを考えます。人を採る、配置を変える、発破をかける。
でも、この社長さんが決めたのは、まったく別のことでした。
必要な会食以外のお酒はやめて、朝5時半に起きてジムに行き、本を読む。
……自分のことなんですよ。
会社のことを1つも決めていません。自分を整えることだけを決めた。
そして、こう書いていました。
ジムに行き、本を読み、瞑想をして心を整えてから会社に行くことで、自然と社員もついてくるような環境になってくる。
整えてから、会社に行く。
この順番が、すべてです。
なぜ、社員のほうを先に触ってはいけないのか
理由は、はっきりしています。
落ちている状態で人を動かそうとすると、伝わり方が変わるからです。
同じ「今月は頑張ろう」でも、社長が整っていれば励ましに聞こえます。社長が焦っていれば、圧に聞こえます。
言葉は同じです。届き方が違うだけです。
そして、社員は言葉より先に、焦りのほうを受け取ります。
だから、焦ったまま人を動かそうとすると、たいてい裏目に出ます。
先に自分。そのあと人。この順番を崩すと、労力のわりに何も変わりません。
「行動が、感情を変える」
ここで、もう1つ大事な話をします。
落ち込んでいるとき、多くの人は気持ちが戻るのを待ちます。
やる気が出たら動こう。前向きになったら決めよう。
逆です。
動いたから、気持ちが変わります。
朝5時半に起きて、体を動かして、本を読む。この間、悩みは1ミリも解決していません。会社の状況も何も変わっていません。
でも、見え方が変わります。
なぜなら、体が整うと、同じ状況が違って見えるからです。これは精神論ではなく、体のほうが先に反応するというだけの話です。
だから、気持ちが戻ってから動くのではなく、動いて気持ちを戻す。
お酒を「やめた」のではありません
もう1つ、この方の決め方がうまいところがあります。
お酒を全部やめたわけではありません。
「必要な会食以外は」と、ちゃんと線を引いています。
これ、地味ですが大事です。
全部やめると決めると、続きません。そして一度崩れたときに、全部が戻ります。
そうではなく、残す場所を先に決めておく。仕事で必要な席は残す。それ以外を切る。
こうすると、破らずに済みます。破らないから、続きます。
続くルールは、最初から続く形で作られています。
社員は、変わった社長を見ています
そして、ここからが本題です。
社長が整い始めると、何が起きるか。
社員が、気づきます。
言わなくても気づきます。朝の顔つきが違う。話すときの余裕が違う。判断が早くなる。
そして、こう思います。
「何かあったのかな」
このとき、初めて言葉が効くようになります。整った社長が話す「今月はこうしよう」は、ちゃんと届きます。
順番として、こうです。
自分を整える → 社員が気づく → 言葉が届く → 会社が動く
多くの社長さんは、いきなり最後の「会社が動く」をやろうとして、うまくいきません。
社員には、押しつけないでください
ここで、1つだけ注意点があります。
自分が整い始めると、うれしくなって、こう言いたくなります。
「みんなも朝早く起きたほうがいいよ」
これ、やめてください。
一気に台無しになります。
なぜなら、社長にとっては自分で選んだことですが、社員にとっては押しつけられたことになるからです。
同じ習慣でも、選んだものは続き、押しつけられたものは反発を生みます。
しかも、伝わり方がこうなります。
「早起きしていない自分は、ダメだと言われている」
そんなつもりはなくても、そう届きます。
だから、黙っていてください。
黙っていても、必ず気づかれます。
そして、気づいた人が自分から聞いてきます。「社長、最近なんか変わりましたね」
そこで初めて話せばいい。聞かれてから話すのは、押しつけになりません。
何をやるかは、何でもいいんです
もう1つ。
朝5時半でなくても構いません。ジムでなくても、本でなくてもいい。
大事なのは中身ではなく、自分で決めて、続いていることです。
散歩でもいい。夜に10分だけ日記を書くでもいい。
「自分で決めたことを、自分で守れている」
この感覚が戻ると、人は判断ができるようになります。
逆に、決めたことを守れていない状態が続くと、自分の言葉を自分で信じられなくなります。そういう社長の言葉は、社員にも届きません。
だから、小さくていい。守れる大きさで決めてください。
まとめ
- 社員は、社長の言葉ではなく状態を見ている
- 落ちている社長の言葉は、励ましではなく圧として届く
- 先に自分。そのあと人
- 気持ちが戻ってから動くのではなく、動いて気持ちを戻す
- 全部やめると続かない。残す場所を先に決める
- 整える → 気づかれる → 言葉が届く → 会社が動く
明日の朝、いつもより30分だけ早く起きてみてください。それだけで大丈夫です。
そして、会社が動かないとき「社員に問題がある」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。
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