1分の自己紹介は、9割を捨てて作ります

交流会で名刺を配る。自己紹介もする。

「いい話でしたね」と言われる。

でも、そこから何も起きない。

もっと伝わるようにしなきゃ、と次はもっと詰め込む。実績も足す。想いも足す。それでも変わらない。

僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。そのうえで、いつも同じことを伝えています。

言いたいことは、9割捨ててください。

足りないから伝わらないのではありません。多すぎるから消えているんです。


3つだけ、守ってください

僕がやっているのは、この3つだけです。

1. 売り込まない。→ だから、相談される。

売ろうとした瞬間、相手は身構えます。身構えた人は、相談してくれません。売らない人のところにだけ、相談が来ます。

2. 説明しない。→ だから、興味を持たれる。

説明されると、人は「分かった」と思います。分かった話に、質問は生まれません。分からないから、聞きたくなる。

3. 9割捨てる。→ だから、記憶に残る。

10個渡されたら、1つも残りません。1つだけ渡されたら、それが残ります。

僕はこれをクロージング自己紹介と呼んでいます。売り込んで終わらせるのではなく、相手が「続きを聞きたい」と思う状態を作って終わる自己紹介、という意味です。


そもそも、自己紹介は目的ではありません

ここで一度、立ち止まってほしいことがあります。

あなたが本当に欲しいのは、いい自己紹介ですか。

違いますよね。欲しいのは、案件です。紹介です。仕事です。

自己紹介は、そこへ行くための手段でしかありません。

ところが、作り込んでいるうちに、いつのまにか目的がすり替わります。「うまく話せた」「かんだところがなかった」が基準になる。

うまく話せた自己紹介と、案件につながる自己紹介は、別物です。

うまく話すことを目指すと、情報が増えます。抜けがないように、誤解されないように、と足していく。そして誰の記憶にも残らないものが完成します。


「あなたは、何を売るんですか」

昔、こんなことがありました。

人事を長くやってこられた方が、相談に来られました。とても優秀な方です。話も上手でした。

ただ、交流会で自己紹介をしても、こう言われてしまう。

「この人は、何をしたい人なんだろう」

僕は、最初にこう聞きました。

「あなたは、何を売るんですか」

その方は、しばらく黙って、こう答えました。

「私は……売るものがない」

本人が、一番驚いていました。

長く経験を積んで、実績もあって、話もできる。それなのに、自分が何を差し出す人なのかが、決まっていなかった。

ここが、9割捨てる前にやるべきことです。

残す1割が決まっていないのに削っても、ただ短くなるだけです。何を残すかを先に決める。だから削れる。

その方は、そこから人生の谷を掘り下げて、毎回書いて、言葉にして、最後にそれを全部1つに集約しました。それが自己紹介になりました。

そして、交流会での自己紹介がきっかけで、ある経営者から「ぜひうちで人事部長をやってほしい」と声がかかりました。

正直に言うと、まじかよ、と思いました。自己紹介から、そこまでいくのかと。


分かっていることと、伝えられることは、別物です

その方が、後にこう言っていました。

「人は自分を知っているようで、知らない。頭の中で何となく分かっていることであっても、自分が何者か、何をしたい人かを言葉にして明確に伝える力というのは、分かっていることと伝えることで、まったく別物だ」

これ、本質だと思います。

多くの人は「自分のことは自分が一番分かっている」と思っています。だから自己紹介を、思い出して並べる作業だと考える。

違うんですよ。作る作業です。

自分の中を掘って、素材を出して、それを1つに集約する。順番はこうです。

  1. 自分を知る(素材を出す)
  2. 集約する(1つに絞る)
  3. 反復する(口に馴染ませる)

3つめも大事です。本番の自信は、才能ではなく反復から来ます。


60秒で終わってください

具体的な形も置いておきます。

目安は60秒。文字数にして300字前後です。

450字書いてくる人がいますが、多すぎます。せっかく興味を持ってもらえても、長いとその気持ちがどこかへ消えていきます。

そして、全部言い終わらないでください。

「もっと聞きたい」で終わるのが、正解です。

聞かれたら、そこで初めて話せばいい。聞かれてから話したことは、押しつけになりません。

何を残すかは、こう決めます

「9割捨てろと言われても、どれを捨てればいいのか」

そう思いますよね。判断の基準を2つ置いておきます。

1つめ。競合も言える言葉は、捨てる。

「お客様に寄り添います」「丁寧にサポートします」。悪い言葉ではありません。でも、同じ業界の全員が言えます。全員が言える言葉は、誰の記憶にも残りません。

2つめ。「え、どういうこと?」と思われる言葉を残す。

人が足を止めるのは、腑に落ちたときではありません。引っかかったときです。

僕が「言いたいことは9割捨てなさい」と言うと、たいてい変な顔をされます。「いや、伝えなきゃ伝わらないでしょ」と。

その顔が出た瞬間、こちらの勝ちです。説明したくなるのは、こちらではなく相手のほうになっているからです。

きれいにまとまった言葉より、少し引っかかる言葉。残すならこちらです。


まとめ

  • 言いたいことは9割捨てる。足りないのではなく、多すぎて消えている
  • 売り込まない → 相談される
  • 説明しない → 興味を持たれる
  • 9割捨てる → 記憶に残る
  • 自己紹介は手段。目的は案件。うまく話すことを目指さない
  • 捨てる前に、残す1割を決める。「あなたは何を売るのか」
  • 60秒・300字前後。全部言い終わらずに終える

削るのは怖いです。でも、削らないと残りません。

そして、案件につながらないとき「自分の実績が足りないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

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