苦手なことがある。
分からないこともある。
でも、それを言ったら選ばれなくなる気がして、黙っている。
聞かれたら困るなと思いながら、できる人の顔をして立っている。
僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。この状態の方に、僕はいつもこう言います。
弱点を隠すのは、優しさではなくプライドです。
厳しい言い方ですが、隠している理由は「相手のため」ではありません。自分がすごいと思われたいからです。
そして残念なことに、相手には全部見えています。
お客さんは、絶対に騙せません
これは、はっきり言い切れます。
お客さんは、目が肥えています。
「この人は、どう売り込んでくるんだろう」と思いながら、こちらを見ています。それが普通です。
そういう相手に対して、こちらが「自分のほうが上だ」という前提で立つと、必ず足元をすくわれます。曖昧なところは見抜かれるし、都合の悪い質問を避けたことも伝わる。
では、どうするか。答えは単純です。
先に言ってしまえばいい。
「私は完璧ではありません」と言っています
僕は、自分のセミナーで、はっきり言っています。
「私は、完璧ではありません」「僕は、何でもすべて分かるわけじゃありません」
そのうえで、こう続けます。
「企業戦略については、僕より引き出しの多い方がいます。だから第3週の講義は、その方に登壇をお願いしています」
正直に言うと、これは僕にとって損な話です。自分ひとりで全部やったほうが、売上は残るんですから。
でも、実際に起きたことは逆でした。
参加してくれた方から、こう言われたんです。
「そこで共感して、申し込みました」「こんなに正直に言う人がいるんだ、と思ったら、逆に親身になってくれていると分かった」
正直に言うと、まじかよ、と思いました。弱みを見せたことが、決め手になっていたわけですから。
「晒す」だけでは、足りません
ただし、注意点があります。
弱点を言うだけだと、ただの不安材料です。
「私はここが苦手です」で終わったら、相手は「じゃあ、その部分はどうなるんだろう」と心配になる。心配が大きくなると、人は買いません。
だから、必ずセットで伝えます。
弱点 + それを補う仕組み。
- 「ここは苦手です。だから、その分野の専門家に入ってもらっています」
- 「これは僕にはできません。だから、できる人を紹介します」
- 「この部分は不得意です。だから、そこは別の形でカバーしています」
こう伝えると、弱点がサービスの説明に変わります。
しかも、ここが面白いところなんですが。補った結果、サービスそのものの質が上がります。質が上がれば、値段を上げる理由にもなる。
弱点を認めた瞬間から、商品が良くなっていくんですよ。
「消すな」と、手を止められました
弱点の扱い方について、僕には忘れられない場面があります。
僕はマインドマップを、開発したトニー・ブザンさんご本人から直接学びました。
あるとき、書いているうちに間違えて、消しゴムで消そうとしたんです。
そうしたら、手を止められました。
「これは失敗じゃない。消すな。別の形に変えられないか、考えなさい」
その場では、正直よく分かりませんでした。間違えたんだから消すでしょう、と。
でも今は、これが全部だと思っています。
「ダメだ、できない」で止めない。「違うものに置き換えられないか」で考える。
弱点も同じです。消そうとするから苦しくなる。置き換えられないかと考えると、道が出てきます。
しゃべりが上手い必要は、ありません
もう一人、教材として何度も使わせてもらっている方がいます。
北海道の赤平で、ロケットを作っている植松努さんです。
その方のプレゼンを、僕はセミナーで流すことがあります。
そして、こう言います。
「この社長のプレゼン、全然上手くないですよね」
本当に、上手くないんです。話し方の教科書に載るようなものではありません。
でも、伝わるんです。
会場が静まり返って、涙ぐむ人まで出る。
なぜか。想いがあるからです。
その方は、中学の先生に「お前なんかにできるわけがない」と言われた経験から、こう言い続けています。
「どうせ無理」は、人の可能性と自信を奪う、最悪の言葉だ。
そして、その言葉の代わりに広めたい言葉があると言います。
「だったら、こうしてみたら」
僕はこれを聞いてから、自分の言葉も変えました。人に対しても、自分に対しても。
弱点を見つけたときに「どうせ無理」と言うのか、「だったらこうしてみたら」と言うのか。
その一言の差が、たぶん全部を分けます。
まとめ
- 弱点を隠すのはプライド。相手のためではない
- お客さんは目が肥えている。隠しても見抜かれる
- 先に言ってしまう。正直さが、そのまま信頼になる
- 晒すだけでは不安材料。必ず「補う仕組み」とセットで伝える
- 補うと、サービスの質が上がる。値段を上げる理由にもなる
- 「ダメだ」で止めず、「置き換えられないか」で考える
- 「どうせ無理」でなく「だったらこうしてみたら」
弱みは、消す対象ではありません。まだ売り物にしていないだけです。
そして、選ばれないとき「自分にはまだ足りないものがあるからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。
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