実績を足す。資格を足す。「◯◯認定」も足す。
プロフィールがどんどん立派になっていく。
なのに、なぜか距離が縮まらない。
僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。そのうえで、はっきり言えることがあります。
すごいと思われることと、頼まれることは、別です。
むしろ、すごくなるほど遠くなることすらあります。
権威づけは、距離を作ります
なぜ、そうなるのか。
相手の立場で考えてみてください。
すごい実績が並んでいる人を見たとき、人はまず何を思うか。
「立派な人だな」
そして、次にこう思います。
「……私なんかが相談していいのかな」
これです。
権威は、信じてもらうためには効きます。でも同時に、壁も作ります。
しかも困ったことに、相談してくる人ほど、自分に自信がありません。うまくいっていないから相談したいわけですから。
その人にとって、あなたが立派すぎるのは、いいことではないんですよ。
選ばれる人が、やっていること
では、選ばれる人は何をしているか。
同じ場所にいたことを、示しています。
「私も、そこにいました」
これだけです。
僕がクライアントの課題に赤ペンを入れるとき、実際にやっていることを1つ紹介します。
ある方が、こう書いてこられました。高校3年生のときに、お父さんを亡くしたと。
そこに、僕はこう返しました。
「◯◯さんも、お父さんを早く亡くされていたのですね。僕も、23歳のときでした。だから、◯◯さんの気持ち、分かるなぁ〜(泣)」
アドバイスは、1つもしていません。
分析もしていません。ただ、自分も同じだったと言っただけです。
でも、この一言のあと、その方の書いてくる文章が変わりました。深いところまで出てくるようになった。
人は、分かってくれる人にしか、本当のことを話しません。
そして本当のことが出てこない限り、こちらは何もしてあげられないんですよ。
開示するのは、こちらが先です
ここで、大事な順番があります。
先に開くのは、こちらです。
「本音で話してくださいね」と言うだけでは、誰も本音を出しません。当たり前です。相手からすれば、こちらがどんな人か分からないんですから。
だから、こちらが先に開く。
失敗したこと。うまくいかなかった時期。まだできていないこと。
先に開いた分だけ、相手も開きます。
これは礼儀の話ではなく、順番の話です。
そしてもう1つ。開示するのは、相手と同じ種類のものにしてください。
お金で苦しんでいる人には、お金で苦しんだ話を。人間関係で悩んでいる人には、人間関係の話を。
別の種類の苦労を出しても、届きません。「大変だったんですね」で終わってしまいます。
相手が言えていないことを、代わりに言う
もう1つ、効くやり方があります。
相手の心の声を、こちらが言葉にしてあげる。
人は、自分が何に困っているかを、うまく言えません。
「なんとなく、うまくいっていない」
「モヤモヤする」
本人の中では、もっと具体的なはずなんです。でも、言葉になっていない。頭の中でぐるぐる回っているだけ。
そこを、こちらが代わりに言います。
「こういうとき、頭の中でこんな声がしませんか」「本当は、こう思っているんじゃないですか」
これが当たったとき、相手の顔が変わります。
「そう、それです」
この瞬間に、信頼が生まれます。分かってくれた、ではなく、自分より自分のことを分かってくれた、になるからです。
僕がクライアントに繰り返し伝えているのも、これです。
「お客さんの気持ちを、あなたが言葉にしてあげてください」
商品の説明を100回するより、これを1回やったほうが早いです。
過去の自分に、声をかけるとしたら
心の声を掘るときに、僕がよく使う問いがあります。
相談を受けていて、その人が昔のつらい出来事の話をしたときです。
「今のあなたが、タイムマシンで当時のあなたに会いに行けるとしたら、どんな声をかけてあげますか」
この問いは、けっこう効きます。
自分のことを他人事として見られるようになるからです。当時の自分には厳しくできない人でも、目の前にいる「当時の自分」には優しくできる。
そして面白いのは、そこで出てきた言葉が、たいていその人がお客さんに言いたいことなんですよ。
自分がかけてほしかった言葉を、人にかけている。これが仕事になる。
だから僕は、この問いの答えをメモしておいてもらいます。そこに、その人のメッセージの原型が入っているからです。
経験した人だけが言えることが、あります
そして、これが一番強い。
当事者であることです。
たとえば、教育について語る人はたくさんいます。でも「実際に自分の子を、そこに通わせた人」の言葉は、まったく重みが違います。
理論として正しいことと、やった人が言うこと。同じ内容でも、後者しか刺さりません。
だから、自分の経験を軽く見ないでください。
「たいしたことない」「みんなやっている」と思っていることの中に、あなたにしか言えないことが入っています。
僕はよく、こう言います。
経験した人だけが言えることです。それは、誰に一番届きますか。
強みとは、すごいことではありません。通った道のことです。
まとめ
- すごいと思われることと、頼まれることは別
- 権威は信じてもらうには効くが、同時に壁も作る
- 選ばれる人は「私もそこにいました」を示している
- 開くのは、こちらが先。開いた分だけ相手も開く
- 開示は、相手と同じ種類のものにする
- 相手が言えていない心の声を、代わりに言葉にする
- 経験した人だけが言えることが、一番強い
足すのをやめてみてください。引いたほうが、近づけることがあります。
そして、距離が縮まらないとき「自分の実績がまだ足りないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。
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