セミナーには来てくれた。個別相談にも申し込んでくれた。
話も、めちゃくちゃ盛り上がった。
なのに最後、「ちょっと考えます」。
そして、連絡は来ない。
これ、しんどいですよね。入口までは全部うまくいっているのに、最後の一歩だけが越えられない。しかも相手の反応が悪かったわけじゃないから、どこを直せばいいのかも分からない。
僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。そのうえで、はっきり言えることがあります。
「考えます」で終わるのは、提案の中身が悪いからではありません。
原因は、そのもっと前。60分の使い方です。
そもそも、個別相談はダラダラやったら終わりです
まず大前提を1つだけ。
個別相談は、60分で決めるものです。
「今日は顔合わせだから」「まずは仲良くなってから」。優しい人ほど、こう考えます。僕も、ずっとそうでした。
そして帰り道で、毎回思うんです。
(今日、何しに行ったんだろう)
でも、相手は忙しいんです。次に会える保証はどこにもない。今日の60分が最初で最後だと思って設計する。ここが全部の土台になります。
そのうえで、決まらない人がやっていることを4つ挙げます。
やっていること①:聞いているだけになっている
一番多いのがこれです。
相手がベラベラ話す。こちらは「うんうん」とうなずく。60分があっという間に過ぎて、「今日は話せてスッキリしました!」と満足して帰っていく。
……で、終わり。
厳しいことを言いますが、聞いているだけでは、受注になりません。
そしてもう1つ。相手がベラベラ話しているということは、こちらが質問をしていないということです。
質問がないから、相手は自分の好きなところを好きなだけ話す。話は広がるけど、深くはならない。だから「で、結局どうすればいいんだろう」のまま帰ることになります。
聞き上手は美徳です。でも個別相談では、こちらが質問で導く。ここを引き受けないと、相手は迷子のままです。
やっていること②:いきなり「お悩みは何ですか」から入っている
これも、めちゃくちゃ惜しいパターンです。
席についてすぐ「今日はどんなことでお悩みですか?」。一見、正しそうに見えます。
でも、相手からするとちょっと唐突なんですよね。心の準備ができていないところに、いきなり一番深いところを聞かれる。だから当たり障りのない答えしか出てきません。
ここで挟むべき言葉が1つあります。
「今日は、お悩みを具体的にしていく時間にしたいと思うんですが、よろしいですか?」
たったこれだけです。
相手が「はい」と言った瞬間、この60分の使い方に合意が取れます。あとは気持ちよく話してもらえる。
そして、ここが大事なんですが、これは同時にこちらが場をコントロールしているということでもあります。相手を縛るためじゃない。相手を迷子にさせないためです。
やっていること③:相手の言葉を、自分の言葉に置き換えて返している
これは、気づいていない人が本当に多いです。
相手が「売上が低迷していて」と言ったとします。それに対して、
「なるほど、売上が下がっているんですね」
……はい、アウトです。
え、同じ意味じゃないの?と思いますよね。違うんです。
「低迷」と「下がっている」は、その人の中では別の言葉なんです。
相手が選んだ言葉には、その人の感覚が乗っています。それを自分の解釈で言い換えて返すと、「いや、そうじゃないんだけどな」という違和感が残る。
そして怖いのが、この違和感は、口には出ません。顔に出ます。
だから、返すときは同じ言葉で返す。
「売上が、低迷しているんですね」
これだけで、「この人はちゃんと聞いてくれている」が伝わります。逆にここを外すと、どれだけいい提案をしても最後まで距離が縮まりません。
やっていること④:悩みだけ聞いて、未来を聞いていない
そしてこれが、最大の原因かもしれません。
多くの人が、悩みを掘って掘って掘りまくって、「なるほど、大変ですね」で終わります。
でも、考えてみてください。
悩みの話をしている間、相手はずっと苦しいんです。
苦しい話を60分されて、最後に「で、どうしますか?」と言われる。そりゃ「考えます」になりますよね。
ここで必要なのが、未来の話です。
「これが全部解決できたとして、3年後、どうなっていたら幸せですか?」
このとき、コツが1つあります。「理想でいいので、いくらでもOKです」と先に言ってあげる。そうしないと、人はすぐ現実的に考えようとしてブレーキを踏みます。
僕がこれをやると、面白いことが起きます。
「いや、未来とか特にないんですよね」と言っていた人が、質問していくとバンバン出てくるんです。カフェをやりたい、両親を呼びたい、家族で旅行に行きたい、アメリカのルート66を走りたい。
そして本人が一番びっくりする。「自分、こんなこと思ってたんだ」って。
このとき、顔つきが変わります。悩みを話しているときと、未来を話しているとき。同じ人とは思えないくらい変わる。
そこでこう聞きます。
「どっちが、気持ちいいですか?」
答えは決まってますよね。
「やめましょう」と言えるかどうか
最後に、実話を1つ。
全部説明して、未来も見えて、それでも「うーん、どうしよう」と迷い続ける人がいます。
昔の僕は、ここで頑張って説得しようとしていました。もう一押し、もう一押しって。
……で、だいたい嫌われます。
相手の顔が、スッと引いていくんですよ。(あ、今やらかした)って、こっちにも分かるんです。
今は、こう言います。声のトーンを、一気に落として。
「やめましょう。きっと、うまくいかないです。」
「ここで決断できないと、この先いろんな壁を越えられません。時間もお金も、もったいないですから」
本気で引きます。演技じゃありません。
すると、どうなるか。だいたい「ちょっと待ってください」と言われます。
これはテクニックの話じゃないんです。迷い続ける人を無理に連れていっても、その人は結果を出せない。だったら、お互いのために引いたほうがいい。本気でそう思っているから、伝わるんだと思います。
逆に、こんなこともありました。「貯金の最後のお金なんです」と言われたとき。
僕は「いいですよ。このお金が増えることを想像して、一緒に頑張りましょう」と答えました。
その方、3ヶ月後に600万円を作りました。
正直に言うと、まじかよ、と思いました。
頑張ったのはその人です。僕は「いける、いける」と横で言い続けただけ。でも、その一言があるかないかで、人は変わります。
まとめ
個別相談で「考えます」と言われ続けているなら、直すのは提案の中身ではありません。
- 聞くだけをやめる。こちらが質問で導く
- 最初に「よろしいですか?」で合意を取る。それだけで60分の質が変わる
- 相手の言葉を、そのまま返す。言い換えた瞬間に違和感が残る
- 悩みで終わらせない。未来を聞くと、顔つきが変わる
- 迷い続ける人には、引く勇気を持つ
どれも、難しいことは何もやっていません。順番を変えるだけです。
そして、うまくいかないときほど「自分のトークが下手だから」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。
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