伝えたいことが、たくさんある。
全部、大事なことだと思っている。だから全部入れる。
そして話し終えたあと、相手の顔を見て気づきます。
何も残っていない。
僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。この状態の方に、僕はいつも同じことを言っています。
伝えたいことが5つあるとしたら、その中の1つだけを100%伝えてください。
この一言が、契約の引き金になりました
なぜこの話から始めたかというと、実際にあったことだからです。
ある交流会で、はじめてお会いした方がいました。不動産の賃貸業をやっていて、少額の不動産投資を教える講座も作ろうとしている方でした。
その方の悩みは、こうでした。
「限られた時間の中で、自己紹介がまとまらない」
「言いたいことがたくさんあって、話があっちこっちに行ってしまう」
僕はその場で、さっきの一言を言いました。伝えたいことが5つあるなら、フロントセミナーでは1つだけ100%伝えるといいですよ、と。
後から聞いた話です。その方は、こう思ったそうです。
「ちょー納得で、印象的で、この人は他のコンサルと何かがちがう、と思った」
そこから、コンサルティングが始まりました。
正直に言うと、まじかよ、と思いました。その場の一言だけで決まっていたなんて、こちらは思ってもいませんでしたから。
ちなみにその方は、その後どうなったか。自分のストーリーを話すようになって認知度が上がり、第三者が勝手に紹介してくれるようになって、成約率は80%を超えました。
出発点は「自己紹介がまとまらない」でした。
詰め込むと、なぜ消えるのか
理由は単純です。
人は、一度に1つしか持って帰れないからです。
5つ渡されると、どれを持てばいいか分からなくなる。だから、結局どれも持たずに帰る。
これは相手の理解力の問題ではありません。渡し方の問題です。
もう1つ。全部話そうとすると、必ず1つあたりが浅くなります。
5つを浅く話した人と、1つを深く話した人。どちらが「この人は分かっている」と思われるか。答えは、考えるまでもないですよね。
全員に刺そうとした人が、一番失敗しました
似た話で、忘れられない報告があります。
料理と健康の分野で活動している方でした。本当は、美容師さんに向けたサービスが本命だったんです。
でもその方は、セミナーで全員に刺そうとした。
美容師さんにも、飲食店の人にも、主婦の方にも届くように、言葉を広げていった。
結果、こう報告してくれました。
「一番、失敗しました」
誰にも刺さらなかったんです。
全員に刺さるように話すと、薄まります。逆に「この人を助けたい」と一点に向かうと、なぜかその周りにいる人にも響く。
不思議ですが、何度見てもそうなります。
ちなみに、僕はこの報告をくれたこと自体がすごく良いと思っています。やったから、この悩みが手に入ったわけですから。やらなかった人には、この学びは一生来ません。
1分で話せるのは、300字です
具体的な数字も出しておきます。
1分=約300字。
これが目安です。
以前、映像制作をやっている方の自己紹介を見たことがあります。とても良い内容でした。「表情を読んで、3秒先の未来が見える」「人柄を映像で表現する」。言葉のセンスもある。
ただ、350字を超えていました。
そして中身が、だんだん会社の説明になっていた。
僕はこう伝えました。
「これは自己紹介じゃなくて、事務所紹介になっています」
1分の自己紹介でやることは、記憶に残すことだけです。理解してもらう必要すらありません。
だから、外せないキーワードを3つだけ決める。それが残れば勝ちです。
残りは、興味を持ってくれた人が後で聞いてくれます。
何を残すかは、どう決めるか
「1つに絞れと言われても、どれを選べばいいのか」
そう思いますよね。基準は1つです。
その人が、今いちばん困っていること。
自分が一番自信のあることでも、一番語りたいことでもありません。相手の痛みに一番近いものを選びます。
そして、こう考えてみてください。
この話を聞いて帰った人が、明日の朝、何を思い出すか。
思い出してほしい一言を先に決めて、そこから逆算して話を組む。この順番にすると、自然と削れます。
削るのは、勇気がいります。せっかく準備したものを捨てるわけですから。
しかも、削っている最中はずっと不安です。「これで足りるのかな」「薄いと思われないかな」と。
でも、思い出してみてください。あなたがこれまで受けた話で、今も覚えているものって、何個ありますか。
たぶん、1つか2つですよね。
それが答えです。どれだけ丁寧に話してもらっても、人が持ち帰れる量は変わりません。だったら、持ち帰ってほしいものをこちらで決めておいたほうがいい。
捨てた分だけ、残ったものが届きます。
まとめ
- 伝えたいことが5つあるなら、1つだけ100%伝える
- 人は一度に1つしか持って帰れない。渡し方の問題であって、相手の問題ではない
- 全員に刺そうとすると、誰にも刺さらない。一点に向かうと、周りにも届く
- 1分=300字。それ以上は事務所紹介になっている
- 残すキーワードは3つまで。理解でなく、記憶に残せばいい
- 選ぶ基準は「相手が今いちばん困っていること」
- 明日の朝、何を思い出してほしいかから逆算する
削るのは怖いです。でも、削らないと何も残りません。
そして、伝わらないとき「自分の話し方が下手だからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。
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