客をなめると、既存客から逃げていきます

新規のお客さんを探し続けている。

来てくれた人は、終わったらそれっきり。

そしてまた、次の新規を探しにいく。

この走り方、いつまで続けるつもりでしょうか。

僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。走り続けて疲れている方に、いつも同じことを伝えています。

すでにいる人を大事にしないと、自分の看板が安くなります。


「解約します」と言った瞬間に出てくるアレ

分かりやすい例があります。

携帯会社です。

長く使っていても、特に何もありません。ところが「解約します」と言った瞬間、こう言われる。

「今なら、キャッシュバックがありますが」

……あれ、どう感じますか。

僕は、こう思います。

「そのタイミングで言うか」

長く払い続けてきたときには何も言わなかったのに、出ていくと言った瞬間にお金を出してくる。

これ、何を言っているかというと、こういうことです。

「あなたは3万円で動く人ですよね」

客をなめているんですよ。

しかも、当の会社は自覚がありません。「引き止め施策」として、真面目にやっている。でも受け取る側には、はっきり伝わります。

そして、一度そう感じた相手のところには、二度と戻りません。


マツダがやっていること

逆の例も見てみます。

マツダは、長年その車に乗り続けている人だけを集めた、感謝のイベントをやっています。

限定のTシャツが配られて、招待される。

参加した人は、どう感じるか。

「ちゃんと見てくれていたんだ」

心が、ぎゅっとなります。

そしてその人は、次もマツダに乗ります。しかも、聞かれてもいないのに人に勧めます。

一方、10年使い続けている通信会社が、こちらに何かしてくれた記憶はありますか。

たぶん、ありませんよね。

この差は、金額ではありません。「見ているかどうか」の差です。


個人には、大企業にできないことができます

ここからが本題です。

大企業がなぜ既存客を大事にできないかというと、稟議が要るからです。

「長年のお客様に、何か特別なことをしたい」と思っても、企画書を書いて、承認を取って、公平性を検討して、コストを計算して……とやっているうちに、当たり障りのないものになります。

個人事業や小さい会社は、これが要りません。

思いついた瞬間に、やれます。

  • 誕生日に、電話を1本かける
  • ちょっとした粗品を送る
  • 高齢のお客さんに、2週間おきに様子をうかがう電話をする

どれも、お金はほとんどかかりません。そして、大企業には絶対に真似できません。

これをやっていると、どうなるか。

他に取られなくなります。

もっと安いところが出てきても、もっと大きいところが来ても、その人は動きません。価格で選ばれていないからです。

人で選ばれている関係は、価格競争の外側にあります。


何をすれば、ファンになるのか

「具体的に何をすればいいのか」と聞かれるので、書いておきます。

特別なことは、何もしなくていいです。

やることは1つだけ。

用がないときに、連絡する。

これだけです。

売り込みでも、案内でもなく、ただ思い出したから連絡する。

「そういえば、あのお話どうなりましたか」

「この記事を読んで、◯◯さんのことを思い出しました」

用があるときにしか連絡してこない人は、営業です。用がないときに連絡してくる人が、知り合いです。

そして人は、営業からは最安値で買いますが、知り合いからは適正価格で買います。

もう1つ。覚えていることを、口に出す。

前に聞いた話を覚えていて、それに触れる。「お子さん、受験でしたよね」「あの案件、通りましたか」。

たったこれだけで、相手は「この人は自分を見てくれている」と感じます。

覚えるのが苦手なら、メモしておけばいいだけです。記憶力の話ではなく、記録する気があるかどうかの話なんですよ。

ただし、自分が整っていないとできません

正直に言うと、これは技術の話ではありません。

自分の状態がそのまま出ます。

心の中で不満を抱えたまま「誕生日に電話しよう」と思っても、相手には伝わってしまいます。「営業だな」と分かってしまう。

逆に、こちらが満たされていると、自然と相手のことを思い出せるようになります。

だから僕は、いつも順番をこう考えています。

自分を整える → 人を思い出せるようになる → 関係が続く

やることリストを増やすより、まず自分の状態を見る。遠回りに見えて、これが一番早いです。


特別を、全員に配らないでください

最後に、1つだけ注意点を。

うまくいき始めると、こう考えたくなります。

「せっかくいい取り組みだから、全員にやろう」

これ、やめてください。

特別扱いを全員に開放した瞬間、特別が特別でなくなります。

そして一番先に離れるのが、それまで特別扱いされていたコアなお客さんです。「自分だけだと思っていたのに」となる。

一番大事にしたかった人を、一番傷つけることになります。

誰にやって、誰にはやらないか。ここも、線を引いてください。


まとめ

  • 既存客を軽んじると、自分の看板が安くなる
  • 出ていくと言われてから出す条件は、「なめている」と伝わる
  • 差は金額ではなく、「見ているかどうか」
  • 個人は稟議がないから、思いついた瞬間にやれる
  • 人で選ばれた関係は、価格競争の外側にある
  • 自分が整っていないと、この目線は持てない
  • 特別を全員に配ると、コア客から離れていく

新規を探す時間を、少しだけすでにいる人に回してみてください。

そして、走り続けて疲れているとき「まだ努力が足りないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

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