自己紹介の前に決めること。誰の前で話すのか

自己紹介を、1つだけ作って、どこでも同じように話す。

多くの人がこうしています。僕も昔そうでした。

一度いいものを作ったんだから、使い回せばいい。効率的に見えますよね。

僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。そのうえで言えることがあります。

中身は同じでいい。でも、入り口は変えてください。

なぜなら、人によって心が動くきっかけが違うからです。


理屈で動く人と、感情で動く人がいます

大きく分けると、2種類います。

理屈で動く人は、根拠を求めます。数字、データ、権威。「なぜそう言えるのか」が先にほしい。ここが埋まると、一気に前のめりになります。

感情で動く人は、人となりを見ます。どんな経験をしてきたか、なぜそれをやっているのか。理屈より先に「この人は信用できるか」を見ている。

同じ話をしても、この2人には別々の入り口が要ります。

理屈で動く人に、いきなり自分の失敗談を語り出すと「で、実績は?」となります。

感情で動く人に、いきなりデータを並べると「なんか売り込まれてる」となります。

どちらも、内容が悪いのではありません。扉が違うだけです。


入り口は、7つあります

前に書いたことがありますが、自己紹介の最初の10秒には型があります。改めて並べると、こうです。

| 入り口 | 向いている相手 ||—|—|| 命令する(「90秒だけ聞いてください」) | 誰にでも。迷ったらこれ || 質問する(「〜だと思っていませんか?」) | 考えるのが好きな人 || クイズを出す | 理屈で動く人 || 権威を借りる(法則・研究データ) | 理屈で動く人 || 意外な名乗り | 場が硬いとき、印象を残したいとき || 失敗を告白する | 感情で動く人 || 問題を突きつける | 今まさに困っている人 |

僕は、同じ内容を話すときでも、部屋を見てここを入れ替えます。

士業の方が多い会なら、権威やデータから入る。個人でやっている方が多い会なら、失敗談から入る。

変えるのは最初の10秒だけです。そのあとの中身は同じでかまいません。


実際に並べたら、5つの型に分かれました

これは自分でやってみて分かったことです。

うまくいっている自己紹介の台本を17本集めて、全部バラして並べました。僕のものと、クライアントの方のもの。業種もバラバラです。

そうしたら、きれいに5つに分かれました。

  1. 痛みを3つ並べて、診断に誘う型(一番つぶしが効く。交流会の鉄板)
  2. クイズや質問から入って、データで裏づける型(理屈で動く人に強い)
  3. 失敗から逆転までを語る型(共感が一番深く入る)
  4. 法則や権威で一気に引き込む型(冒頭のインパクトで記憶に残す)
  5. 困りごとを名指しして、独自の名前をつけた解決策を出す型(業種が特化しているとき)

面白かったのは、業種で分かれていなかったことです。

不動産の方と、コーチングの方が、同じ型を使っていたりする。分かれ目は業種ではなく、誰に向かって話しているかでした。

そしてもう1つ。長さも全然違いました。短いものは50秒、長いものは90秒。時間が違えば、入れられるものも変わります。


だから、3つ持っておいてください

ここから、実務的な話です。

交流会に行くと、その日によって持ち時間が変わります。「一人30秒でお願いします」と言われることもあれば、「じっくりどうぞ」のこともある。

そのときに慌てて削ると、削ってはいけないところを削ります。

たいてい後半が飛びます。そして後半には、オファーと「次にしてほしいこと」が入っている。一番仕事に近い部分が消えるわけです。

だから、先に3つ作っておきます。

  • 50秒版(約350字)
  • 70秒版(約450字)
  • 90秒版(約580字)

その場で選ぶだけにしておく。これだけで、事故がなくなります。


見落とされやすいのは、最後の2つです

17本を並べてみて、もう1つ気づいたことがあります。

抜けやすい場所が、はっきり決まっていました。

抜けていたのは、この2つです。

1つめ。「今である理由」と、価格の見せ方。

「1名様限定です」「通常3万円のところ、今日は5千円で」。こういう一言があるかどうかで、その場で動く人の数がまるで違います。

2つめ。感情のほうのメリット。

数字は入っているのに、「そうなったとき、どんな気持ちになるか」が抜けている。

「売上が2倍になります」だけだと、頭では分かっても心が動きません。「堂々と自分の仕事を語れるようになります」まで言うと、変わります。

この2つ、自分では気づきにくいんですよ。だから、書き終わったら必ずここだけチェックしてください。


まとめ

  • 中身は同じでいい。入り口だけ変える
  • 理屈で動く人には、データや権威から
  • 感情で動く人には、失敗談から
  • 変えるのは最初の10秒だけ
  • 型は5つ。業種ではなく、誰に話すかで決まる
  • 長さ違いで3つ持っておく。その場で削ると、一番大事な後半が飛ぶ
  • 抜けやすいのは「今である理由」と「感情のメリット」

作り直す必要はありません。入り口を何本か用意しておくだけです。

そして、伝わらないとき「自分の話し方が悪いからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

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