うまくいっていないとき、人はこう考えます。
「何か大きく変えなきゃ」
新しいことを始めよう。ガラッと方針を変えよう。今のままではダメだ。
そして、その「大きさ」に押し潰されて、結局何もできないまま1日が終わります。
僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。そして、僕自身がそこで止まったことがあります。
必要なのは、大きく飛ぶことではありません。1ミリです。
会社の口座が、909円になりました
コロナのときの話をします。
あの時期、僕の仕事は全部止まりました。
コンサルティングも、企業研修も、すべてキャンセル。人が集まれないので、当たり前です。
そして、僕はある判断をしました。
すでにお支払いいただいていたぶんを、全額お返ししたんです。
契約上は、返す義務はありませんでした。でも、こちらが提供できていないのに手元に置いておくのは、どうにも気持ちが悪かった。
それで、返しました。
その結果、どうなったか。
会社の口座残高が、909円になりました。
……もう、笑うしかなかったです。本当に。
コロナのせいにしても、何も解決しませんでした
そのとき、頭に浮かんだことがあります。
これは、自分ではコントロールできない。
コロナが来たことも、人が集まれなくなったことも、僕がどれだけ頑張っても、どうにもなりません。
だから、こう思うこともできました。
「コロナのせいだ」
「あのお客さんが急にキャンセルしたせいだ」
でも、はっきり分かっていたことがあります。
そう言ったところで、口座は909円のままだ。
誰かのせいにするのは、気持ちは楽になります。でも、現実は1ミリも動きません。
だから、考え方を変えました。
コントロールできないものは、置いておく。今できることをやる。
やったのは、振り返ることだけでした
では、何をしたか。
大げさなことは、何もしていません。
これまで自分がやってきたことを、もう一度全部振り返りました。
何が足りなかったのか。どこで手を抜いていたのか。この状況になって、何が求められるようになったのか。
派手な打ち手ではありません。誰かに見せられるようなことでもない。
ただ、今日できることを1つやる。それだけを繰り返しました。
大きくジャンプしようとすると、助走の距離が要ります。そして助走している間に、心が折れます。
でも1ミリなら、今日の自分でも越えられる。
前向きな気持ちというのは、そこから出てきます。「明日から本気を出す」ではなく、「今日ここを1ミリ」。この差は、思っているより大きいです。
すぐには、良くなりませんでした
正直に書いておきます。
1ミリ進んだからといって、翌日に何かが起きるわけではありません。
口座は909円のまま、しばらく動きませんでした。今日1つやって、明日も1つやって、それでも数字は変わらない。
そういう時期が、確かにありました。
でも、そこからです。
1ヶ月ほどで、仕事がじわじわと戻ってきました。
少しずつ、本当に少しずつ。そして気づいたら、300万円ほどが入ってきていました。
正直に言うと、まじかよ、と思いました。あの909円から、そんなに時間はかかっていなかったんです。
一番の収穫は、お金ではありませんでした
300万円という数字だけ見れば、経営していれば普通のことです。特別な金額ではありません。
でも、あのときの僕にとっては、まったく違う意味がありました。
得たものが、3つあります。
1つめ。お金の大事さを、体で味わいました。頭では分かっていたつもりでした。でも、違いました。
2つめ。自分の志を、考え直しました。何のためにこの仕事をしているのか。誰をどうサポートしたいのか。順調なときには、ここまで真剣に考えません。
そして、3つめが一番大きいです。
お金がなくて、夜眠れない。
これを、僕は初めて経験しました。それまでの人生で、なかったんです。
天井を見ながら、朝が来るのが怖い。あの感覚を、身をもって知りました。
そして、こう思いました。
ああ、これがあの人たちが感じていたことなのか。
相談に来られる経営者の方の中には、この状態の方がいます。それまで僕は、その話を「理解している」つもりでいました。
分かっていませんでした。
あの夜を過ごしてから、同じ話を聞いたときの受け取り方が変わりました。相槌ひとつ、間の取り方ひとつが変わったと思います。
結局、あの時期に得たものは、全部プラスに動きました。
苦しかったのは間違いありません。でも、今から振り返ると、あれは良い時間だったと言えます。
1ミリの本当の意味
最後に、これだけ伝えたいです。
1ミリというのは、「小さく頑張れ」という話ではありません。
まず、今の現実を受け入れる。
909円なら、909円だと認める。そこを誤魔化さない。良く見せようともしない。
そのうえで、そこから一歩進む。
このとき、「大きく進まなきゃいけない」と思うから、足が止まります。
1ミリでいいと思えた瞬間に、はじめて足が出ます。
そして、1ミリ進んだ場所から見える景色は、昨日とは違います。違う景色が見えると、次の1ミリが少し楽になる。
その繰り返しです。
まとめ
- 大きく変えようとするから、動けなくなる
- コントロールできないものは、置いておく
- 誰かのせいにすると気は楽になるが、現実は1ミリも動かない
- やることは、これまでを振り返って、今日できることを1つ
- すぐには良くならない。1ミリ進んでも、しばらく数字は動かない
- そこから1ヶ月で、じわじわ戻ってきた
- 一番の収穫はお金ではなく、眠れない夜を知ったこと
- まず現実を受け入れる。そこから1ミリ
今日、大きく変える必要はありません。1ミリだけ、昨日を超えてください。
そして、うまくいかないとき「もっと大きく動かないとダメだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。
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