感情を書かないストーリーは、ただの経歴です

自分の歩みを、書いてみた。

順番に、起きたことを並べた。

読み返したら、履歴書みたいになっていました。

僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。この原因は、はっきりしています。

出来事しか、書いていないからです。


出来事だけでは、心が動きません

例を見てください。

「2015年に独立し、2018年に法人化しました。2020年からは研修事業も始めています」

何も感じませんよね。

事実は、全部正しい。うそも1つもない。

でも、読んだ人の心は1ミリも動きません。

なぜなら、そのときあなたが何を感じていたかが、書かれていないからです。


人が反応するのは、感情のほうです

ここは、はっきり書いておきます。

人は、出来事には反応しません。感情に反応します。

なぜかというと、出来事は他人のものだからです。

あなたが独立した年は、読んだ人には関係がありません。

でも、そのとき感じた不安や、決めた瞬間の気持ちは、読んだ人も知っています。

そこで、初めてつながります。


分けて書いてください

やり方は、簡単です。

出来事と、感情を、分けて書き出してください。

まず、起きたことを箇条書きにします。

  • 独立した
  • 最初の3か月、仕事がなかった
  • 初めて契約が取れた

次に、それぞれの横に、そのとき思ったことを書きます。

  • 独立した → (これで、もう戻れない)
  • 3か月、仕事がなかった → (自分は、間違えたのかもしれない)
  • 初めて契約が取れた → (手が震えた)

この2列目が、記事の中身です。


心の声を、そのまま置いてください

書き方のコツを1つ。

感情を、説明しないでください。

  • 弱い:そのとき、私は大きな不安を感じていました
  • 強い:(自分は、間違えたのかもしれない)

かっこで囲んで、そのまま置く。

これだけで、まったく違うものになります。

説明されると、読む人は理解します。

そのまま置かれると、読む人は体験します。

そして、体験したものだけが記憶に残ります。


1つ入れるだけで、変わります

ここで、量の話をします。

感情のセリフは、たくさん入れなくていいです。

むしろ、多すぎると重くなります。

1本に1つか2つで十分です。

そして、置く場所が大事です。

いちばん谷が深いところに、1つ。

ここに置くと、そこから先が全部読まれます。

逆に、上がっている場面にたくさん置くと、自慢に見えます。

下がっているところに置くのが、原則です。


谷が深いほど、山が効きます

もう1つ、構造の話をします。

いい自己紹介には、必ず谷と山があります。

そして、谷が深いほど、山が効きます。

だから、谷を薄く書かないでください。

多くの方は、ここを短くします。かっこ悪いので、早く通り過ぎたくなる。

でも、そこが読まれる場所です。

そして、山に上がるところには、数字を入れてください。

  • 弱い:売上が大きく伸びました
  • 強い:月200万円が、240万円になりました

数字が入ると、映像が浮かびます。


弱みを、資格に変えてください

もう1つ、強い型を渡します。

過去の弱みを、今の仕事の資格として書く。

例を挙げます。

  • 成績が最下位だった → だから、伸び悩む人の気持ちが分かる
  • 人間関係で失敗した → だから、その直し方を知っている

これは、言い訳ではありません。

その経験がなければ、今の仕事はできなかったという構造です。

そして、この振れ幅が大きいほど、強くなります。

弱みを隠すと、普通の経歴になります。

弱みを出すと、その人にしか語れない話になります。


志は、長く書かなくていいんです

最後に、書かなくていいものを1つ挙げます。

志や理想を、長く書かないでください。

「人々の可能性を広げたい」

こういう文は、読み飛ばされます。

なぜなら、誰でも書けるからです。

そして、志は書かなくても伝わります。

出来事と感情が正しく書かれていれば、読んだ人が勝手に受け取ります。

この人は、こういうことを大事にしているんだな、と。

自分で言うより、そう思ってもらったほうが強いです。


時制を、そろえてください

細かいけれど、効くことを1つ書きます。

過去の話を書くとき、そのときの時制で書いてください。

  • 弱い:当時は、まだ何も分かっていませんでした
  • 強い:何も、分かっていませんでした

前者は、今の自分が振り返って解説しています。

後者は、そのときの自分の言葉です。

振り返って解説すると、距離ができます。

読む人は、あなたが安全な場所から過去を語っているのを見ることになります。

でも、そのときの言葉で書かれていると、読む人も一緒にそこに立てます。

この違いは、読んでいて明らかに分かります。

そして、多くの人が無意識に前者になっています。安全だからです。

状況の説明を、削ってください

もう1つ、削るべきものがあります。

状況の説明です。

  • 「当時、業界全体が不況でして」
  • 「その頃は、まだ制度が整っておらず」

こういう文が入ると、急に読む速度が落ちます。

読む人は、あなたの業界の事情を知りたいわけではありません。

あなたがどうだったかを知りたいんです。

だから、説明は最小限にしてください。

必要なら、1行だけ。それ以上書きたくなったら、言い訳になっていないかを疑ってください。


まとめ

  • 出来事だけでは、心は動かない
  • 人は感情に反応する。出来事は他人のものだから
  • 出来事と感情を、2列に分けて書き出す
  • 感情は説明せず、心の声としてそのまま置く
  • 1本に1つか2つ。いちばん谷が深いところに置く
  • 谷が深いほど、山が効く
  • 山には数字を入れる
  • 弱みを、今の仕事の資格として書く
  • 志は長く書かない。伝われば十分

自分の歩みを2列で書き出してみてください。右の列だけ読み返すと、書くべきことが見えます。

そして、伝わらないとき「自分の経歴が地味だからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

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