書いた文章を読み返して、こう思ったことはありませんか。
「間違ってはいないんだけど、なんか薄いな」
丁寧に書いた。分かりやすくもした。でも、自分らしさがない。誰が書いても同じに見える。
僕は起業して12年、500名を超える経営者の方の文章を見てきました。この「薄さ」には、はっきりした原因があります。
無難な言葉を、無意識に選んでいるからです。
そして、これはたった1語で変わります。
「チャゲアス」ではなく「飛鳥涼」
実際にあった場面から話します。
ある方の課題に、こういう質問がありました。「青春時代に憧れた人は?」
その方は、こう書いてこられました。
ユーミン、桑田佳祐、飛鳥涼、北川悦吏子
僕はここに、赤ペンでこう書きました。
「チャゲアスではなく『飛鳥涼』と書くところがカッコイイ!!」
伝わりますでしょうか。
「CHAGE and ASKA」と書くのと、「飛鳥涼」と書くのは、まったく別の情報なんです。
グループ名を書く人は、その音楽が好きだった。個人名を書く人は、その人そのものを見ていた。曲だけでなく、書いていた言葉や、生き方に反応していた可能性が高い。
たった1語で、その人の見ていたものが分かってしまう。
逆に、無難な名前が出てくるとき
同じ質問で、こういう答えも本当によく出ます。
「松田聖子」
有名です。誰でも知っています。間違ってもいません。
ただ、僕はこれを見ると、少し引っかかります。
本当にその人だったのかな、と。
もちろん、本当に大好きだった人もいます。でも、正直に言うと、こう感じることのほうが多いです。
自分の気持ちに、フタをしているのかもしれない。
「これを書いたら変に思われないかな」
「もっとちゃんとした答えを書かないと」
そう考えた瞬間に、人は一番有名な名前を選びます。減点されない答えを選ぶ。
学校のテストなら正解です。でも、自分を伝える場面では、これが一番の失点なんですよ。
減点されない答えは、誰の記憶にも残らないからです。
具体的なほど、本音が出ます
なぜ固有名詞が効くのか。
具体的なものほど、選ぶときに本音が要るからです。
「音楽が好きです」なら、誰でも書けます。無難です。「桑田佳祐が好きです」なら、少し自分が出ます。「桑田佳祐の、あの曲のあの一行が忘れられません」まで書くと、もうその人にしか書けない文章になります。
範囲が狭くなるほど、代わりがきかなくなる。
だから僕は、赤ペンでよくこう聞きます。
「どの歌詞に、ビビッと来ましたか?」
ここまで掘ると、その人が何に反応する人なのかが出てきます。そしてそれは、たいていその人の仕事の軸とつながっています。
自分の言葉を、もう一度定義してみてください
もう1つ、同じ話の別の形があります。
自分がよく使う言葉を、そのままにしない。
たとえば、こんな文章がありました。
私の強みは「適当」が上手なところです。手の抜き方がうまい。
私は「普通」のことを言わないようにしています。
どちらもいい言葉です。でも、そのままだと伝わりません。
なぜかというと、「適当」も「普通」も、人によって中身がまったく違うからです。
だから僕は、こう聞きました。
「『適当』を、具体的に書けますか?」「あなたにとっての『普通』とは、何ですか?」
ここを言葉にした瞬間に、その人の考え方が見えてきます。
そして面白いのは、本人がここで一番驚くことです。「自分はこういう意味で使っていたのか」と。
自分の口ぐせの中身を、自分でも知らない。これ、本当によくあります。
恥ずかしいほうを、残してください
ここまで読んで、たぶんこう思った方がいると思います。
「そこまで具体的に書くの、恥ずかしいんですけど」
分かります。僕もそうでした。
でも、その恥ずかしさこそが目印です。
恥ずかしいということは、そこに自分が出ているということなんですよ。何も出ていない文章は、書いていて恥ずかしくありません。すらすら書けて、読み返しても何も感じない。
そして読む側も、同じように何も感じません。
だから僕は、迷ったときの基準をこう決めています。
2つ候補があったら、恥ずかしいほうを残す。
もちろん、なんでも出せばいいわけではありません。人が傷つくことや、相手の秘密は書かない。それは別の話です。
ここで言っているのは、「かっこ悪く見えるかも」という理由だけで削っていないかということです。
その理由で削ったものは、たいてい一番人柄が出ていた部分です。
好きと嫌いの差にも、答えが入っています
もう1つだけ、掘り方を紹介します。
ある方が、こう書いてこられました。
苦手なこと:SNSでの集客。やらなくてもいいかなと思ってしまう。楽しいこと:異業種交流会に行くこと。
僕は、こう返しました。
「SNS集客と異業種交流会の違いは、何ですか?」「スキ・キライの差に、何がありますか? ここ、言語化が大事かもです!!」
同じ「集客」なのに、片方は苦痛で、片方は楽しい。
その差の中に、その人の強みが入っています。
この方の場合、おそらく「人と直接会って反応が返ってくること」が好きなんです。だとしたら、集客の設計もそちらに寄せたほうがいい。SNSを頑張るのは、たぶん遠回りです。
苦手を克服するより、好きの理由を言語化したほうが、仕事は早く進みます。
まとめ
- 薄い文章の原因は、無難な言葉を無意識に選んでいること
- 固有名詞を1つ変えるだけで、人柄が出る
- 一番有名な名前を選んだときは、フタをしているかもしれない
- 範囲が狭いほど、代わりがきかなくなる
- 自分の口ぐせ(「適当」「普通」)の中身を、定義し直す
- 好きと嫌いの差の中に、強みが入っている
書き直す必要はありません。1語だけ、より具体的なものに置き換えてみてください。
そして、文章に自分らしさが出ないとき「自分には個性がないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。
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