お客様の言葉を、そのまま使ってください

いい言葉が、思いつかない。

何時間も考えて、結局よくある表現になる。

そして、誰にも刺さりません。

僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。ここで頭を絞るのは、時間の無駄です。

刺さる言葉は、考えて作るものではなく、拾うものです。


売り手の言葉は、届きません

まず、理由を説明します。

私たちは、自分の商売について詳しくなりすぎています。

そして、詳しくなるほど、業界の言葉で考えるようになります。

  • 課題を可視化します
  • 最適化のご提案をします
  • 体質を改善します

……本人は真剣です。でも、客の側からすると、何のことか分かりません。

そして、分からない言葉は読み飛ばされます。


客は、こう言っています

同じ内容を、実際の客がどう言うか。

たとえば、高齢者向けの住まいを探している方の声を集めたことがあります。

出てきた言葉が、これです。

「年齢だけで断られる」「元気なのに、施設しか選択肢がない」「最後まで、普通の暮らしを続けたい」「孤独死が不安」

……見てください。

1つも、業界の言葉がありません。

そして、どれも読んだ瞬間に情景が浮かびます。

この言葉を、そのまま使えばいいんです。


そのまま使う、が大事です

ここ、間違えやすいところです。

拾った言葉を、きれいに整えないでください。

  • 「年齢だけで断られる」→ ✗「年齢を理由とした入居拒否」
  • 「元気なのに、施設しか選択肢がない」→ ✗「自立した高齢者の住宅選択肢の不足」

整えた瞬間に、死にます。

なぜなら、整えるというのは売り手の言葉に翻訳することだからです。

生の言葉には、言った人の感情が残っています。それが、読んだ人の心を動かします。

下手でいいんです。生のままが、いちばん強い。


どこから拾うか

では、どこで拾えばいいか。

順番に挙げます。

① 過去のお客さんに、直接聞く

いちばん確実です。

「相談する前、いちばん困っていたことは何でしたか」

この質問1つで、使える言葉が出てきます。

② 相談中のメモを、見返す

すでに手元にあるはずです。相談の記録を読み返すと、生の言葉が眠っています。

③ 断られたときの言葉も、拾う

これも大事です。断り文句には、その人の本音が入っています。


予想と、必ずずれます

拾ってみると、必ず驚くことがあります。

自分が売りだと思っていた点と、選ばれた理由が違います。

「丁寧なところが良かった」と思っていたら、「レスポンスの速さ」を挙げられた。

「専門性を評価された」と思っていたら、「話しやすかった」だった。

……これ、本当によくあります。

そして、このずれを直すだけで、届き方が変わります。

一生懸命アピールしていた点が、実は誰も気にしていなかった。逆に、当たり前だと思ってアピールしていなかった点が、選ばれる理由だった。

聞かないと、一生分かりません。


拾った言葉は、そのまま置いてください

拾ったあとの使い方も書いておきます。

引用の形で、そのまま置いてください。

自分の文章に溶かし込むと、また売り手の言葉に戻ります。

そうではなく、そのまま置く。

「年齢だけで断られるんです」

こうやって、鍵かっこで置くだけでいい。

そして、その下に自分の言葉で続けます。

生の声 → 自分の解釈

この順番だと、読んだ人は先に自分の状況を思い出し、そのあとで説明を受け取ります。

逆にすると、説明から入ることになるので、そこで閉じられます。


集めた言葉は、資産です

最後に、続け方の話をします。

拾った言葉は、1か所にためてください。

紙でも、メモでも構いません。

これをためていくと、何が起きるか。

書くのに困らなくなります。

文章を書くとき、ゼロから考えるのではなく、ためた言葉の中から選ぶ形になります。

考える作業が、選ぶ作業に変わります。

これは、想像以上にラクです。

そして、この一覧は年々厚くなります。時間が経つほど強くなる、数少ないものです。


ためた言葉は、そのまま見出しになります

もう1つ、使い道を書いておきます。

拾った言葉は、そのまま見出しに使えます。

  • 「年齢だけで断られる」
  • 「元気なのに、施設しか選択肢がない」

……この2つ、そのまま記事の題名になりますよね。

そして、こういう題名は強いです。

なぜなら、同じ状況の人が、自分の言葉として認識するからです。

自分で考えた題名は、どうしても説明的になります。「高齢者向け住宅選びのポイント」のような。

でも、生の言葉は説明ではありません。そのまま、誰かの心の声です。

だから、目に入った瞬間に止まります。

数は、少なくていいんです

最後に、量の話をします。

「たくさん集めないと使えない」と思わないでください。

3つあれば、十分に始められます。

100人に聞く必要はありません。よく分かっている人が3人いれば、その3人の言葉で書けます。

そして、書いてみて反応を見る。

反応が薄ければ、また聞きに行く。

これを繰り返すほうが、最初に大量に集めるより早いです。

集めることが目的にならないように気をつけてください。使わなければ、ただのメモです。


まとめ

  • 売り手は、業界の言葉で考えてしまう
  • 分からない言葉は、読み飛ばされる
  • 客の生の言葉には、情景と感情が残っている
  • 整えると死ぬ。下手なまま、そのまま使う
  • 過去の客に聞く/相談メモを見返す/断り文句も拾う
  • 売りだと思っていた点と、選ばれた理由は必ずずれる
  • 生の声 → 自分の解釈、の順で置く
  • 拾った言葉は1か所にためる。年々厚くなる資産になる

過去のお客さんの言葉を、3つだけ書き出してみてください。

そして、書けないとき「自分には文章力がない」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

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