AIに任せていい仕事と、絶対に人がやる仕事の線引き

執筆者:

カテゴリ:

AIは便利だと分かっている。

でも、何を渡していいのか分からない。

大事な仕事を渡すのはこわいし、かといって小さい作業だけ渡しても、たいして変わった気がしない。

そのまま止まっている方、けっこう多いです。

起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。最近は「AIをどう使えばいいですか」と聞かれることが増えました。

迷うのは、能力の問題ではありません。線を教わっていないだけです。

線は1本だけ覚えれば足ります。今日はそれを渡します。

前提:線は「難しさ」では引かない

多くの人は、こう考えます。

簡単な仕事はAI、難しい仕事は自分。

これ、外れます。AIは難しいことのほうが得意だからです。決算の数字を整理するのも、何十本もの資料から共通点を抜き出すのも、人間より速い。

私の場合、決算書のPDFを読ませて表に整えるのも、記事を1ヶ月で87本書くのも、全部渡しています。人間がやったら何日かかるか分からない仕事です。

逆に、たった30秒の電話を渡したことは一度もありません。

正しい線は、難しさではありません。

相手の心が動く場所かどうか。ここです。

心が動く場所は人間がやる。それ以外は全部渡していい。

分け方①:誰に売るか

AIに渡す。過去に決まった案件と、決まらなかった案件を全部並べて「どこに共通点があるか」を出させる。これは自分でやるとまず正確になりません。思い出したい記憶だけ思い出してしまうので。

人がやる。その人たちが実際にいる場所へ、行く。

材料はAI、足は自分です。

分け方②:何を言うか

AIに渡す。言葉の候補出し。自己紹介の骨組み、提案の順番、想定される質問と答え。10案でも20案でも出ます。

人がやる。その中から1つ選ぶこと。そして、目の前の人の顔を見て、間を取って話すこと。

選ぶ作業は、捨てる作業です。そして捨てるときには、必ず痛みが出ます。

伝えたいことが5つあるなら、4つ捨てて1つを100%伝える。頭では分かっても、実際に捨てようとすると手が止まります。どれも自分が積み上げてきたものだからです。

AIは痛みません。10案を平気で出して、平気で9案を消します。

でもお客様は、そこが痛かった人の言葉しか信じません。痛みの跡が、その人らしさとして残るからです。

分け方③:どう追いかけるか

AIに渡す。誰にいつ連絡するか、その順番と、文面の下書き。

人がやる。送る前に、自分の言葉に直すこと。そして、返事が来ない相手に、もう一度出すかどうかの判断。

下書きのままきれいに送られてきた文章は、読めば分かります。整いすぎている文は、届きません。

渡してはいけないものが、もう1つあります

謝るとき、断るとき、値段を伝えるとき。

この3つは、下書きすら作らせないほうがいいです。

理由は単純で、この3つは内容ではなく、覚悟が伝わる場面だからです。何を書いたかより、この人が自分の口で言ったかどうかを見られています。

言いにくいことほど、自分の言葉が効きます。逆に言えば、ここを楽にしようとすると、いちばん失いたくないものを失います。

分け方④:振り返り

AIに渡す。数字を出す。今月何件会って、何件相談になって、何件決まったか。ここは感情を挟まないほうがいいので、むしろAIのほうが正確です。

人がやる。その数字を見て、来週どうするか決めること。

決めるところだけは、代われません。

実話:3つの事業を、1つに絞ってもらった話

以前、事業を3本持っている方をサポートしました。

不動産の投資、留学の手配、それからもう1本。どれも本物の実績があります。

でも、自己紹介で3つとも話すので、聞いた人が誰も覚えていない。

私がお願いしたのは1つだけでした。

「1つに絞りましょう。あとの2つは、今日は言わないでください」

反発されました。当然です。全部、時間をかけて育てた事業ですから。

(そりゃそうだよな、と思いました)

3つとも本物なんです。嘘は1つもない。だから余計に、どれも落としたくない。

でも絞ってから、成約率は80%を超えました。しかも、本人が売り込んでいないのに、聞いた人が勝手に紹介してくれるようになった。

ここで大事なのは、「どれを残すか」はAIでも出せるということです。数字を見れば、いちばん利益が出ている事業はすぐ分かる。

出せなかったのは、捨てる決断のほうでした。

あれは本人にしかできません。数字で示されても、人は納得だけでは動かないからです。

まとめ

  • 線は「難しさ」ではなく、相手の心が動く場所かどうかで引く
  • 誰に売るかは、材料がAI、足が自分
  • 何を言うかは、候補がAI、選んで捨てるのが自分
  • どう追うかは、下書きがAI、自分の言葉に直すのが自分
  • 振り返りは、数字がAI、決めるのが自分

迷ったら、この1問で決まります。

それは、お客様の心が動く場所か。

動く場所なら自分でやる。動かない場所なら、全部渡していい。

この線が引けると、AIはこわくなくなります。むしろ、自分がやるべき仕事だけが手元に残るので、1日がすっきりします。

私はこの線を引いてから、机に向かう時間が半分以下になりました。その分、人と会う時間が増えました。数字が動き始めたのは、そこからです。

うまくいかないときほど「使いこなせていないのかな」と思い込みがちですが、たいてい原因はもっと手前にあります。

あなたの案件が「どこで止まっているのか」は、無料の診断ツールで60秒でチェックできます。自分の現在地が分かると、次の一歩が見えてきます。