部下が相談に来ます。
そして、こう言います。
「これ、どうすればいいですか」
……1日に何回、この言葉を聞いていますか。
僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。この状態の会社には、共通した1つの穴があります。
相談のときのルールが、決まっていません。
「自分の考えがなかった」
ある社長さんが、自社の状態をこう書いていました。
「どうすれば良いですか、など、自分の考えがなかった」
短い一文ですが、状況が全部入っています。
相談は来る。でも、手ぶらで来る。
そして社長が答えを出す。部下はそれを持って帰る。うまくいく。
一見、何も問題がないように見えます。仕事は前に進んでいますから。
でも、この形を続けていると、決まった数だけ社長の仕事が増えていきます。そして部下の判断力は、1ミリも増えません。
ルールは、たった1行です
その社長さんが決めたルールは、これでした。
相談をする前に、自分で考えた案を出す。または、やってみてから相談する。
これだけです。
「相談するな」ではありません。相談していい。ただし、手ぶらでは来ない。
この1行を置くだけで、何が変わるか。
部下が、相談する前に必ず一度考えます。
考えて、案を作って、それを持ってくる。この過程が、そのまま訓練になります。
しかも面白いことに、考えている途中で解決してしまうことがかなりあります。人に説明できる形にまとめる過程で、自分で答えが見えるからです。
相談件数そのものが、勝手に減ります。
案が間違っていても、いいんです
ここで大事なことがあります。
持ってきた案が、間違っていても構いません。
むしろ、間違っているほうがいい。
なぜなら、そこから会話が始まるからです。
「なるほど、そう考えたんですね。なぜそう思いました?」
「もし、そうしなかった場合はどうなりますか」
こういうやり取りができます。手ぶらで来られたら、この会話は成立しません。答えを渡して終わりです。
そして、こういうやり取りを重ねた部下は、次からその問いを自分の中で先にやるようになります。
社長の頭の使い方が、そのまま移っていくんですよ。
最初に、必ず承認してください
ただし、1つだけ守ってほしいことがあります。
案を持ってきたら、まず「考えてきたこと自体」を認めてください。
ここが分かれ道です。
せっかく考えて持ってきたのに、いきなり「いや、それは違う」と言われたら、どうなるか。
次から、また手ぶらで来ます。
考えても否定されるなら、考えないほうが早いからです。合理的な判断です。
だから、まず一言。
「お、考えてきたんですね」
それから中身の話に入る。この順番だけで、続くかどうかが決まります。
自律的に動く組織になるか、また指示待ちに戻るか。分かれ目は、たいていここです。
週に1回、必ず向き合う
もう1つ、その社長さんが決めたことがあります。
毎週1回以上、一人ひとりとミーティングをする。
ルールを置いただけでは、定着しません。
「案を持ってこい」と言われても、最初はうまく作れない。何をどこまで考えればいいのかも分からない。
だから、練習の場を用意しておくんです。
そこで、案の作り方そのものを一緒にやる。どう考えたか、他にどんな選択肢があったか、なぜそれを選んだか。
判断の仕方を教えているわけです。答えではなく。
「やってみてから相談する」も、アリです
さっきのルールには、もう1つ選択肢が入っていました。
「または、やってみてから相談する」
ここ、見落とされやすいのですが、実はかなり大事です。
案を考えるのが苦手な人がいます。特に、経験が浅い人。頭の中だけで正解を作れと言われても、材料がないので作れません。
そういう人には、先にやらせたほうが早いです。
やってみれば、必ず何かが起きます。うまくいくか、うまくいかないか。どちらでも構いません。材料が手に入ります。
そして持ってくる。「こうやってみたら、こうなりました」
これなら、誰でもできます。そして、この報告は案よりも価値があります。実際に起きたことなので。
だから、ルールは2択にしておいてください。
- 考えてから相談する
- やってみてから相談する
どちらでもいい。手ぶらでなければいい。
この幅があると、部下のタイプを問わず回ります。
社長の仕事は、答えることではありません
最後に、いちばん大事なことを書きます。
社長が答えを出し続けている限り、その会社の判断力は、社長一人ぶんのままです。
10人いても、判断できるのは1人。だから10人ぶんの相談が、1人に集まる。当然、詰まります。
でも、部下が自分で案を作れるようになれば、判断力が人数ぶんに増えます。
そのために社長がやることは、答えを出すことではありません。
問いを返すことです。
「あなたはどう思いますか」
この一言を返せるかどうか。それだけで、数年後の会社がまったく違うものになります。
まとめ
- 「どうすればいいですか」は、ルールが無いから起きる
- ルールは1行。相談の前に、自分の案を出す。またはやってみてから相談する
- 考える過程で、勝手に解決することも多い
- 案が間違っていてもいい。そこから会話が始まる
- まず「考えてきたこと」を承認する。否定から入ると、次から手ぶらに戻る
- 週1回、判断の仕方を一緒に練習する
- 社長の仕事は、答えることではなく、問いを返すこと
明日の相談から、「あなたはどう思いますか」を1回だけ言ってみてください。
そして、部下が動かないとき「うちの社員は主体性がないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。
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