社員が、指示を出すまで動かない。
自分から提案してくることも、ほとんどない。
やる気がないわけではなさそうなのに、なぜか受け身のまま。
僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。この状態には、原因があります。
会社の絵の描き方が、そうさせています。
「会社の上に、社長と社員がいる状態」
ある社長さんが、自社の現状をこう書いていました。
家族経営的なやり方で、私が指示を出すまでは、受け身の状態。会社の上に、社長と社員がいる状態。
この2行目が、鋭いです。
会社が下にあって、その上に人が乗っている。
つまり、会社という器がまずあって、そこに社長と社員という身分が並んでいる状態です。
そして身分がある以上、上下がつきます。社長が上、社員が下。
このとき、社員の頭の中はこうなります。
「上の人が決める。自分は言われたことをやる」
これは、やる気の問題ではありません。その絵の中では、それが正しい振る舞いなんです。
掴んだ、一行
同じ課題の中で、この社長さんは自分で答えにたどり着きました。
会社という法人格と、社長・社員は切り離す。社長は社長という役割。社員にも役割がある。
……これ、僕が教えたことではありません。ご自身で書かれました。
読んだ瞬間、これは大きいなと思いました。
なぜなら、上下から役割へ、発想が完全に変わっているからです。
役割にすると、何が変わるのか
同じ人、同じ会社、同じ仕事です。
でも、こう置き換えます。
会社は、会社という1つの存在。社長は、社長という役割を担う人。社員は、社員という役割を担う人。
3つが、横に並びます。
その社長さんは、役割の中身までこう書いていました。
社員の役割は、売上を上げてくること。社長の役割は、責任を取ること。
シンプルですが、これで十分です。
そして大事なのは、どちらが偉いかが、この文の中に無いことです。
「持ち場」ができると、人は動きます
役割で語れるようになると、社員の感覚が変わります。
上下の絵だと、仕事は「やらされるもの」です。上の人から降ってきます。
役割の絵だと、仕事は「自分の持ち場」になります。
持ち場は、誰も代わりにやってくれません。だから、自分で考えます。
やらされと持ち場。この違いは、決定的です。
しかも、社長にとってもいいことがあります。
社長は「偉い人」をやらなくて済みます。
いつも正しくて、いつも決められて、いつも強い。この役を演じるのは疲れます。
でも役割なら、責任を取るのが仕事です。それだけです。分からないことは「分からない」と言えます。
温かさは、捨てなくていい
ここで、心配になる社長さんがいます。
「役割とか言い出したら、うちの家族みたいな雰囲気が壊れないか」
壊れません。
変えるのは、上下だけです。
その社長さんは、同じ課題の中でこうも書いていました。
社員一人ひとりの家族を第一に考えて行動する。ただし仕事の時間は、その分集中する。
家族第一で、もちろんいい。その上で、自分の仕事を全うすることに誇りを持てる文化。
温かさは、そのまま残っています。
つまり、温かさと曖昧さは別物なんですよ。
多くの会社が、この2つを一緒くたにしています。仲がいいから決めない。決めないから曖昧になる。曖昧だから、いざというときにもめる。
温かいまま、はっきりさせる。これができます。
「自分の商店だと思ってやってくれ」
その社長さんが、社員に伝えている言葉があります。
一人ひとりが、自分の商店をやっているつもりで働いてほしい。
役割の話を、いちばん短く言うとこうなります。
自分の店なら、言われる前に掃除します。お客さんの顔も覚えます。売れなければ、なぜ売れないか考えます。
当たり前ですよね。自分の店だから。
そして、この意識を根づかせるために、この方は週1回のミーティングを必ずやると決めていました。
渡すだけでは、届きません。渡して、毎週向き合う。セットです。
役割にすると、評価がラクになります
役割で語ることには、思わぬおまけがあります。
評価が、しやすくなります。
上下の絵だと、評価はこうなります。
「あいつは頑張っている」「あいつは頑張っていない」
人柄の話になってしまうんですよ。だから言いにくいし、言われたほうも傷つきます。
でも役割の絵だと、こうなります。
「今月、役割は果たせましたか」
これなら話せます。人格の話をしていないので。
そして、できていなかったときも、責める形になりません。役割に足りていなかった、という事実の確認で済みます。
厳しいことが言えない社長さんほど、この違いは効きます。
言えないのは、人柄を否定する形になるからです。役割の話にした瞬間、言えるようになります。
社長の役割も、書いてください
もう1つ、忘れないでほしいことがあります。
役割を決めるとき、社員の役割だけを決める社長がいます。
これだと、結局は上下のままです。上の人が、下の人の役割を決めている形なので。
だから、自分の役割も同じ紙に書いてください。
「社長の役割は、責任を取ること」
これを社員の前で言えるかどうかで、空気がまったく変わります。
なぜなら、社員はこう受け取るからです。
「この人は、自分にも役割を課している」
一方的でないと分かった瞬間、渡された役割は受け取りやすくなります。
役割は、全員ぶん書く。ここまでやって、初めて横並びになります。
まとめ
- 「会社の上に社長と社員がいる」絵が、指示待ちを作る
- 上下があると、社員は「言われたことをやる」が正解になる
- 会社・社長・社員を切り離し、横に並べる
- 社員の役割は売上を上げること、社長の役割は責任を取ること
- やらされ、が、自分の持ち場に変わる
- 社長も「偉い人」を演じなくて済む
- 温かさと曖昧さは別物。温かいまま、はっきりさせる
一度、自分の会社の絵を紙に描いてみてください。会社の上に自分が乗っていませんか。
そして、社員が動かないとき「主体性がないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。
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