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  • 会社と、社長と、社員を切り離して考える

    会社と、社長と、社員を切り離して考える

    社員が、指示を出すまで動かない。

    自分から提案してくることも、ほとんどない。

    やる気がないわけではなさそうなのに、なぜか受け身のまま。

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。この状態には、原因があります。

    会社の絵の描き方が、そうさせています。


    「会社の上に、社長と社員がいる状態」

    ある社長さんが、自社の現状をこう書いていました。

    家族経営的なやり方で、私が指示を出すまでは、受け身の状態。会社の上に、社長と社員がいる状態。

    この2行目が、鋭いです。

    会社が下にあって、その上に人が乗っている。

    つまり、会社という器がまずあって、そこに社長と社員という身分が並んでいる状態です。

    そして身分がある以上、上下がつきます。社長が上、社員が下。

    このとき、社員の頭の中はこうなります。

    「上の人が決める。自分は言われたことをやる」

    これは、やる気の問題ではありません。その絵の中では、それが正しい振る舞いなんです。


    掴んだ、一行

    同じ課題の中で、この社長さんは自分で答えにたどり着きました。

    会社という法人格と、社長・社員は切り離す。社長は社長という役割。社員にも役割がある。

    ……これ、僕が教えたことではありません。ご自身で書かれました。

    読んだ瞬間、これは大きいなと思いました。

    なぜなら、上下から役割へ、発想が完全に変わっているからです。


    役割にすると、何が変わるのか

    同じ人、同じ会社、同じ仕事です。

    でも、こう置き換えます。

    会社は、会社という1つの存在。社長は、社長という役割を担う人。社員は、社員という役割を担う人。

    3つが、横に並びます。

    その社長さんは、役割の中身までこう書いていました。

    社員の役割は、売上を上げてくること。社長の役割は、責任を取ること。

    シンプルですが、これで十分です。

    そして大事なのは、どちらが偉いかが、この文の中に無いことです。


    「持ち場」ができると、人は動きます

    役割で語れるようになると、社員の感覚が変わります。

    上下の絵だと、仕事は「やらされるもの」です。上の人から降ってきます。

    役割の絵だと、仕事は「自分の持ち場」になります。

    持ち場は、誰も代わりにやってくれません。だから、自分で考えます。

    やらされと持ち場。この違いは、決定的です。

    しかも、社長にとってもいいことがあります。

    社長は「偉い人」をやらなくて済みます。

    いつも正しくて、いつも決められて、いつも強い。この役を演じるのは疲れます。

    でも役割なら、責任を取るのが仕事です。それだけです。分からないことは「分からない」と言えます。


    温かさは、捨てなくていい

    ここで、心配になる社長さんがいます。

    「役割とか言い出したら、うちの家族みたいな雰囲気が壊れないか」

    壊れません。

    変えるのは、上下だけです。

    その社長さんは、同じ課題の中でこうも書いていました。

    社員一人ひとりの家族を第一に考えて行動する。ただし仕事の時間は、その分集中する。

    家族第一で、もちろんいい。その上で、自分の仕事を全うすることに誇りを持てる文化。

    温かさは、そのまま残っています。

    つまり、温かさと曖昧さは別物なんですよ。

    多くの会社が、この2つを一緒くたにしています。仲がいいから決めない。決めないから曖昧になる。曖昧だから、いざというときにもめる。

    温かいまま、はっきりさせる。これができます。


    「自分の商店だと思ってやってくれ」

    その社長さんが、社員に伝えている言葉があります。

    一人ひとりが、自分の商店をやっているつもりで働いてほしい。

    役割の話を、いちばん短く言うとこうなります。

    自分の店なら、言われる前に掃除します。お客さんの顔も覚えます。売れなければ、なぜ売れないか考えます。

    当たり前ですよね。自分の店だから。

    そして、この意識を根づかせるために、この方は週1回のミーティングを必ずやると決めていました。

    渡すだけでは、届きません。渡して、毎週向き合う。セットです。


    役割にすると、評価がラクになります

    役割で語ることには、思わぬおまけがあります。

    評価が、しやすくなります。

    上下の絵だと、評価はこうなります。

    「あいつは頑張っている」「あいつは頑張っていない」

    人柄の話になってしまうんですよ。だから言いにくいし、言われたほうも傷つきます。

    でも役割の絵だと、こうなります。

    「今月、役割は果たせましたか」

    これなら話せます。人格の話をしていないので。

    そして、できていなかったときも、責める形になりません。役割に足りていなかった、という事実の確認で済みます。

    厳しいことが言えない社長さんほど、この違いは効きます。

    言えないのは、人柄を否定する形になるからです。役割の話にした瞬間、言えるようになります。

    社長の役割も、書いてください

    もう1つ、忘れないでほしいことがあります。

    役割を決めるとき、社員の役割だけを決める社長がいます。

    これだと、結局は上下のままです。上の人が、下の人の役割を決めている形なので。

    だから、自分の役割も同じ紙に書いてください。

    「社長の役割は、責任を取ること」

    これを社員の前で言えるかどうかで、空気がまったく変わります。

    なぜなら、社員はこう受け取るからです。

    「この人は、自分にも役割を課している」

    一方的でないと分かった瞬間、渡された役割は受け取りやすくなります。

    役割は、全員ぶん書く。ここまでやって、初めて横並びになります。


    まとめ

    • 「会社の上に社長と社員がいる」絵が、指示待ちを作る
    • 上下があると、社員は「言われたことをやる」が正解になる
    • 会社・社長・社員を切り離し、横に並べる
    • 社員の役割は売上を上げること、社長の役割は責任を取ること
    • やらされ、が、自分の持ち場に変わる
    • 社長も「偉い人」を演じなくて済む
    • 温かさと曖昧さは別物。温かいまま、はっきりさせる

    一度、自分の会社の絵を紙に描いてみてください。会社の上に自分が乗っていませんか。

    そして、社員が動かないとき「主体性がないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

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  • 優しいだけの社長が、一番失うもの

    優しいだけの社長が、一番失うもの

    社員に、厳しいことが言えない。

    言おうと思って、口を開いて、結局「まぁ、いいか」で終わる。

    そして、同じことが繰り返される。

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。この悩みを持つ社長さんは、全員いい人です。

    だから、こうお伝えしています。

    優しさを捨てる必要はありません。足りないのは、厳しさではなく「決めること」です。


    「支えるだけ」と「導く」は、違います

    ある社長さんが、自分の状態をこう書いていました。

    「支えるだけ」ではなく「導く存在」になる

    この一行、すごくいいんですよ。

    支えるというのは、相手の今を守ることです。

    導くというのは、相手の未来をつくることです。

    どちらも愛ですが、向いている先が違います。

    そして、支えるだけを何年も続けると、相手の今は守れても、未来は止まります。


    「なぁなぁだった」

    同じ社長さんが、こうも書いていました。

    これまでは、結構な部分でなぁなぁな関係でした。私自身もしっかりとした明確で分かりやすい指示をしてこなかったし、検証、振り返りをしてこなかった。

    この、自分を責めずに正直に振り返れる姿勢。ここに、この方の強さが出ています。

    ちなみに、この会社で何が起きていたか。

    営業の会社なのに、社員がずっと会社の中にいる。外に出ない。現場も見に行かない。

    でも、社長は何も言っていませんでした。

    「言わなくても分かるだろう」と思っていたわけではありません。言いにくかったんです。

    その結果、社員のほうは「これが普通なんだ」と思い込んでいました。

    誰も悪くない。でも、伝えていないことは、伝わっていません。


    厳しさとは、責めることではありません

    ここで、多くの社長さんが誤解します。

    厳しくする=怒る、詰める、圧をかける。

    違います。

    厳しさとは、「ここまでやろう」と一緒に基準を決めることです。

    「今月から、現場は週に最低3件見に行こう」

    これ、怒っていません。声も荒げていません。

    でも、基準がはっきりしています。

    そして、基準があると、できたかできなかったかが分かります。分かるから、振り返れる。振り返れるから、伸びます。

    優しい人でも、これはできます。むしろ、優しい人がやったほうが効きます。


    優しいだけの社長が、失うもの

    では、決めないままだと何を失うか。

    3つあります。

    1つめは、社員の成長です。基準がないので、どこを目指せばいいか分かりません。

    2つめは、社長自身の時間です。育たないので、いつまでも社長が現場に出ます。

    そして、3つめが一番大きい。

    社員からの信頼です。

    意外に思われるかもしれません。優しくしているのに、信頼を失う。

    でも、考えてみてください。何も言われない状態が続くと、社員はこう思います。

    「この人は、自分に興味がないのかもしれない」

    言われないことは、優しさではなく関心のなさとして届くことがあります。


    「優しいけれど、道しるべになる社長」

    最後に、その社長さんが自分で言葉にした、目指す姿を紹介します。

    優しいけれども、しっかりと道しるべになってくれる社長。何か困ったことがあっても相談のしやすい環境を提供できる社長。否定しない、常にポジティブ、一緒にずっと働きたいと思える社長。

    優しさと厳しさを、対立ではなく両立として描けています。

    ここが大事です。

    厳しくするために優しさを捨てる社長がいますが、それは別人になっているだけです。誰もついてきません。

    優しさは、そのまま持っていていい。そこに「決めて、伝えて、見届ける」を足すだけです。


    厳しく言えない人が、使える言い方

    とはいえ、「今日から基準を伝えよう」と思っても、口が動かない人がいます。

    分かります。僕もそうでした。

    そういうときは、主語を変えてみてください。

    言いにくいのは、たいてい主語が相手だからです。

    「あなたは、現場を見に行っていないよね」

    これは、言いにくい。責めている形になっているので。

    主語を自分にすると、こうなります。

    「僕は、みんなに現場をもっと見てほしいと思っています」

    内容は同じです。でも、責めていません。自分の願いを言っているだけなので、言いやすい。

    そして、聞くほうも身構えません。

    ここから基準につなげます。

    「なので、週に3件と決めます」

    願い、そして決定。この2文だけです。

    言いにくさの正体は、たいてい言い方の型を持っていないことです。型があれば、優しい人でも言えます。

    順番を、間違えないでください

    もう1つ、大事なコツがあります。

    先に承認、あとで基準。

    いきなり基準の話から入ると、否定として届きます。

    だから、必ずこの順にしてください。

    「いつも助かっています。ありがとうございます」「その上で、1つ決めたいことがあります」

    前半がないと、後半が刺さります。前半があると、後半が届きます。

    ちなみに、この前半はお世辞ではいけません。本当に思っていることを言ってください。

    優しい社長さんなら、本当に思っていることが必ずあるはずです。それを、口に出していないだけです。


    まとめ

    • 支えるのは今を守ること。導くのは未来をつくること
    • 言いにくいことを後回しにするのが、優しい社長の癖
    • 厳しさ=責めることではなく、一緒に基準を決めること
    • 失うのは、社員の成長・社長の時間・そして信頼
    • 何も言われない状態は、関心のなさとして届く
    • 優しさは捨てない。「決めて、伝えて、見届ける」を足す

    明日、基準を1つだけ決めて、伝えてみてください。何でも構いません。

    そして、社員が動かないとき「厳しく言えない自分が悪い」と責めがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

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  • 言われる前に潰しておくべき、5つの曖昧さ

    言われる前に潰しておくべき、5つの曖昧さ

    立ち上げから一緒にやってきた社員が、辞めると言ってきた。

    まったく予想していなかった。

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。この話を聞くと、必ず同じことをお伝えします。

    辞めた原因は、その人の気持ちではありません。決めていなかったことです。


    「うちは信頼関係でやってるから」

    小さい会社ほど、こう言います。

    そして、それは嘘ではありません。実際、仲は良い。飲みにも行く。相談もされる。

    でも、信頼関係と、決め事は別のものです。

    信頼があるから決めなくていい、ではありません。決めていないから、信頼が削れていくんです。

    ある社長さんが、社員の退職のあとにご自身で洗い出した項目があります。

    これが、驚くほど教科書的でした。5つです。


    ① 雇用の契約が、書面になっていない

    「うちは家族みたいなものだから」と、口約束で始めている会社があります。

    これが、いちばん危ない。

    もめるのは、辞めるときだからです。

    入るときは全員が善意です。だから何も決めなくても回る。でも辞めるとき、双方の記憶が食い違います。

    そして、書いていないほうが必ず損をします。


    ② 評価の基準が、決まっていない

    「頑張ってるから、そのうち上げてあげよう」

    これ、社長の頭の中にしかありません。

    社員から見ると、上がるかどうかが社長の気分次第に見えます。

    そして、この状態が続くと、こう思われます。

    「この会社にいても、先が読めない」

    人は、給料の額そのものより、上がる道筋が見えないことで辞めます。


    ③ 歩合の扱いが、あいまい

    歩合を出している会社は、ここが特に危ないです。

    いくらの案件で、いつ、いくら入るのか。取り消しになったらどうなるのか。

    この計算を、社員が自分でできますか。

    できないなら、あいまいです。


    ④ 働き方の指針が、ない

    在宅勤務を認めている会社で、よく起きます。

    何時から何時まで動くのか。何を報告するのか。会社に来るのは週に何回か。

    自由にしていいよ、は指針ではありません。

    決まっていないと、社員は「これでいいのか」と不安なまま働きます。そして社長は「サボっていないか」と不安なまま見ています。

    どちらも消耗しています。


    ⑤ お金の入りと出のタイミングが、不安定

    これが、5つの中でいちばん効きます。

    その社長さんは、退職した社員の立場に立って、こう書き出していました。

    「社長は飲みに行ったりゴルフに行ったりしているのに、私への歩合が遅れるというのはどういうこと?」

    ……痛いですよね。

    でも、この言葉を自分で書き出せたことが、この方のすごさです。

    人は、自分に都合の悪い相手の本音からは、つい目をそらします。

    そして、これは金額の問題ではありません。説明がなかったことの問題です。

    遅れるなら遅れると先に言う。理由も言う。それだけで、人は待ってくれます。

    黙って遅れるのが、いちばん信頼を削ります。


    悪い社長だから、起きるのではありません

    念のため書いておきます。

    この社長さん、人としてはとてもいい方です。

    売上が落ちても人のせいにしない。いつも笑顔。社員思い。

    それでも、起きました。

    なぜなら、優しさは決め事の代わりにならないからです。

    むしろ、優しい社長ほど「言いにくいこと」を後回しにします。契約の話、評価の話、お金の話。全部、言いにくいことです。

    だから曖昧なまま置かれる。そして、いちばん信頼していた人が離れていきます。


    明文化は、社長を守るためではありません

    もう1つ、伝えておきたいことがあります。

    契約書や規則の話をすると、こう受け取る社長さんがいます。

    「自分が訴えられないようにするため」

    違います。逆です。

    決め事は、社員のためにあります。

    想像してみてください。あなたが社員だとして、評価の基準も、歩合の計算も、休みの取り方も、何ひとつ紙になっていない会社にいるとします。

    毎日、社長の顔色を読むことになります。

    今日は機嫌がいいから聞けそうだ。今は忙しそうだからやめておこう。

    この読み合いに、どれだけの気力が使われているか。

    決め事があると、この作業が消えます。紙を見ればいいので、社長に確認しなくていい。

    顔色を読まなくていい会社は、それだけで働きやすいんです。

    そして、社長も助かります。同じ質問を何度も受けなくて済みますから。

    「人が増えてから」では、遅いです

    もう1つよく聞くのが、これです。

    「うちはまだ3人だから、そこまで要らない」

    気持ちは分かります。でも、順番が逆です。

    3人のうちに作っておくから、10人になっても回ります。

    10人になってから作ろうとすると、すでに人それぞれの慣習ができあがっています。それを後から揃えるのは、ゼロから作るより何倍も大変です。

    しかも、後から作ったルールは「誰かのせい」に見えます。

    「あの人が問題を起こしたから、こうなった」

    こうなると、決め事そのものが嫌われます。

    誰も何も起こしていない今のうちに作る。これがいちばん摩擦がありません。


    まとめ

    • 辞める原因は気持ちではなく、決めていなかったこと
    • ① 雇用の契約を、書面にする
    • ② 評価の基準を、決めて見せる
    • ③ 歩合を、社員が自分で計算できる形にする
    • ④ 働き方の指針を、決めて渡す
    • ⑤ お金の入りと出は、先に説明する
    • 優しい社長ほど、言いにくいことを後回しにする

    5つ全部やろうとすると、動けません。まず1つ、紙に一行書くところからで大丈夫です。

    そして、人が離れていくとき「相手の問題だ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

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  • 「どうすればいいですか」と聞く部下を変える、1つのルール

    「どうすればいいですか」と聞く部下を変える、1つのルール

    部下が相談に来ます。

    そして、こう言います。

    「これ、どうすればいいですか」

    ……1日に何回、この言葉を聞いていますか。

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。この状態の会社には、共通した1つの穴があります。

    相談のときのルールが、決まっていません。


    「自分の考えがなかった」

    ある社長さんが、自社の状態をこう書いていました。

    「どうすれば良いですか、など、自分の考えがなかった」

    短い一文ですが、状況が全部入っています。

    相談は来る。でも、手ぶらで来る。

    そして社長が答えを出す。部下はそれを持って帰る。うまくいく。

    一見、何も問題がないように見えます。仕事は前に進んでいますから。

    でも、この形を続けていると、決まった数だけ社長の仕事が増えていきます。そして部下の判断力は、1ミリも増えません。


    ルールは、たった1行です

    その社長さんが決めたルールは、これでした。

    相談をする前に、自分で考えた案を出す。または、やってみてから相談する。

    これだけです。

    「相談するな」ではありません。相談していい。ただし、手ぶらでは来ない。

    この1行を置くだけで、何が変わるか。

    部下が、相談する前に必ず一度考えます。

    考えて、案を作って、それを持ってくる。この過程が、そのまま訓練になります。

    しかも面白いことに、考えている途中で解決してしまうことがかなりあります。人に説明できる形にまとめる過程で、自分で答えが見えるからです。

    相談件数そのものが、勝手に減ります。


    案が間違っていても、いいんです

    ここで大事なことがあります。

    持ってきた案が、間違っていても構いません。

    むしろ、間違っているほうがいい。

    なぜなら、そこから会話が始まるからです。

    「なるほど、そう考えたんですね。なぜそう思いました?」

    「もし、そうしなかった場合はどうなりますか」

    こういうやり取りができます。手ぶらで来られたら、この会話は成立しません。答えを渡して終わりです。

    そして、こういうやり取りを重ねた部下は、次からその問いを自分の中で先にやるようになります。

    社長の頭の使い方が、そのまま移っていくんですよ。


    最初に、必ず承認してください

    ただし、1つだけ守ってほしいことがあります。

    案を持ってきたら、まず「考えてきたこと自体」を認めてください。

    ここが分かれ道です。

    せっかく考えて持ってきたのに、いきなり「いや、それは違う」と言われたら、どうなるか。

    次から、また手ぶらで来ます。

    考えても否定されるなら、考えないほうが早いからです。合理的な判断です。

    だから、まず一言。

    「お、考えてきたんですね」

    それから中身の話に入る。この順番だけで、続くかどうかが決まります。

    自律的に動く組織になるか、また指示待ちに戻るか。分かれ目は、たいていここです。


    週に1回、必ず向き合う

    もう1つ、その社長さんが決めたことがあります。

    毎週1回以上、一人ひとりとミーティングをする。

    ルールを置いただけでは、定着しません。

    「案を持ってこい」と言われても、最初はうまく作れない。何をどこまで考えればいいのかも分からない。

    だから、練習の場を用意しておくんです。

    そこで、案の作り方そのものを一緒にやる。どう考えたか、他にどんな選択肢があったか、なぜそれを選んだか。

    判断の仕方を教えているわけです。答えではなく。


    「やってみてから相談する」も、アリです

    さっきのルールには、もう1つ選択肢が入っていました。

    「または、やってみてから相談する」

    ここ、見落とされやすいのですが、実はかなり大事です。

    案を考えるのが苦手な人がいます。特に、経験が浅い人。頭の中だけで正解を作れと言われても、材料がないので作れません。

    そういう人には、先にやらせたほうが早いです。

    やってみれば、必ず何かが起きます。うまくいくか、うまくいかないか。どちらでも構いません。材料が手に入ります。

    そして持ってくる。「こうやってみたら、こうなりました」

    これなら、誰でもできます。そして、この報告は案よりも価値があります。実際に起きたことなので。

    だから、ルールは2択にしておいてください。

    • 考えてから相談する
    • やってみてから相談する

    どちらでもいい。手ぶらでなければいい。

    この幅があると、部下のタイプを問わず回ります。

    社長の仕事は、答えることではありません

    最後に、いちばん大事なことを書きます。

    社長が答えを出し続けている限り、その会社の判断力は、社長一人ぶんのままです。

    10人いても、判断できるのは1人。だから10人ぶんの相談が、1人に集まる。当然、詰まります。

    でも、部下が自分で案を作れるようになれば、判断力が人数ぶんに増えます。

    そのために社長がやることは、答えを出すことではありません。

    問いを返すことです。

    「あなたはどう思いますか」

    この一言を返せるかどうか。それだけで、数年後の会社がまったく違うものになります。


    まとめ

    • 「どうすればいいですか」は、ルールが無いから起きる
    • ルールは1行。相談の前に、自分の案を出す。またはやってみてから相談する
    • 考える過程で、勝手に解決することも多い
    • 案が間違っていてもいい。そこから会話が始まる
    • まず「考えてきたこと」を承認する。否定から入ると、次から手ぶらに戻る
    • 週1回、判断の仕方を一緒に練習する
    • 社長の仕事は、答えることではなく、問いを返すこと

    明日の相談から、「あなたはどう思いますか」を1回だけ言ってみてください。

    そして、部下が動かないとき「うちの社員は主体性がないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

    あなたの案件が「どこで止まっているのか」は、無料の診断ツールで60秒でチェックできます。止まっている場所が分かれば、次の一歩も見えてきます。

  • 面倒を見る優しさが、部下の成長を奪っています

    面倒を見る優しさが、部下の成長を奪っています

    部下が、なかなか育たない。

    任せたいけれど、任せると心配で、結局自分が出ていく。

    そして、いつまでも自分がいないと回らない。

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。この状態の社長さんは、例外なく面倒見がいい人です。

    そして、そこに原因があります。

    面倒を見ることが、そのまま成長の機会を奪っています。


    ある社長が、自分で気づきました

    相談に来られた、社員数名の会社の社長さんの話です。

    その方は、部下の商談にほぼ毎回、同行していました。

    理由は、まっとうです。自分が一緒に行けば、うまくいくから。そして、その場で教えられるから。

    ところが、ある日ご自身でこう書いてこられました。

    「同行することによって、成長する機会を奪ってしまっている可能性もある」

    これ、僕が指摘したことではありません。ご本人が、自分で気づいたんです。

    そして、この一文を書ける社長は、実はそう多くありません。


    なぜ、同行すると育たないのか

    理由は単純です。

    社長がいると、部下は考えなくなるからです。

    これは、やる気の問題ではありません。当たり前の反応です。

    隣に答えを持っている人がいるなら、自分で考えるのは非効率ですよね。分からなくなったら振り返ればいい。判断が要る場面では、目で合図すればいい。

    その場は、確実にうまくいきます。

    でも、そこで部下が使ったのは「考える力」ではなく「頼る力」です。

    そして、この状態が何年も続くと、どうなるか。

    5年目の部下が、1年目と同じ判断力のままになります。

    社長は「まだ任せられない」と言います。でも、任せなかったから育っていないんですよ。順番が逆になっているんです。


    「あえて、やらない」

    その社長さんが決めたことは、シンプルでした。

    今までサポートしてきた部分を、あえてやらない。自分で考えさせる。どうしたほうがいいかを考えさせたうえで、ミーティングを重ねる。

    「あえてやらない」。これがすべてです。

    見放すのとは違います。手を出さずに、見ているんです。

    そして、後ろにミーティングを置いている。ここが大事です。放り出すのではなく、振り返りの場を用意したうえで、先に手を離す。

    順番が、こうなっています。

    やらせる → 失敗する → 一緒に振り返る → また やらせる

    多くの社長は、この最初の「やらせる」を飛ばして、いきなり教えます。だから何も残りません。


    手を出したくなる瞬間が、必ず来ます

    ただ、これは口で言うほど簡単ではありません。

    やらせてみると、下手なんです。

    自分がやれば5分で終わることに1時間かかる。言い方も甘い。詰めも甘い。見ていてイライラする。

    そして、こう思います。

    「貸してみろ」

    ここで手を出したら、全部が終わります。その瞬間、部下は「やっぱり自分では無理だ」と学習します。

    だから僕は、その社長さんにこう聞きました。

    「手を出したくなる瞬間が、必ず来ます。そのとき、自分にどんな言葉をかけてあげれば、ぐっとこらえられそうですか」

    これは、社長本人の課題なんですよ。部下の課題ではなく。

    任せられないのは、部下の実力の問題ではありません。社長が我慢できるかどうかの問題です。


    社長が現場にいると、社長の仕事ができません

    もう1つ、忘れてはいけないことがあります。

    その社長さんは、こうも書いていました。

    同行を続けていると、新しい事業を立ち上げる時間が取れない。

    そして、売上も停滞する。

    つまり、面倒を見ることのコストは、部下の成長だけではないんです。

    社長にしかできない仕事が、丸ごと止まっています。

    新しい柱を作る。人を採る。方向を決める。外とつながる。これは部下にはできません。社長の仕事です。

    その時間を、部下でもできる仕事に使っている。

    優しさのつもりが、二重に損をしているわけです。


    教えるより、失敗させたほうが安い

    もう1つ、社長が抱えがちな誤解があります。

    「失敗させたら、損をする」

    たしかに、目先ではそうです。取れたはずの契約が取れない。お客さんに迷惑がかかるかもしれない。

    でも、金額で考えてみてください。

    1件の失注と、5年間伸びない人材。どちらが高くつくでしょうか。

    しかも、失敗は取り返せます。社長がフォローに入ればいい。頭を下げに行けばいい。それは社長にしかできない仕事で、しかも一度で済みます。

    一方、育たなかった5年は取り返せません。

    だから僕は、こうお伝えしています。

    失敗させるコストは、育成の費用だと思ってください。

    研修に何十万も出す会社はたくさんあります。でも、目の前の1件を失敗させるほうが、はるかに濃い研修になります。

    そして、そこで痛い思いをした人は、二度と同じ失敗をしません。教わっただけの人は、何度でもやります。

    「自分の商店だと思ってやってくれ」

    最後に、その社長さんが言っていた言葉を紹介します。

    社員一人ひとりに、自分の商店をやっているつもりで働いてほしい。

    これは、突き放しているのではありません。

    「あなたの判断で決めていい」と渡しているんです。

    そして、その意識をつけるために、週1回のミーティングを必ずやると決めていました。

    任せる。でも、放置はしない。週に1回、必ず向き合う。

    このバランスが取れたとき、人は伸び始めます。


    まとめ

    • 面倒を見ることが、成長の機会を奪っている
    • 社長がいると、部下は考えない。やる気ではなく、当たり前の反応
    • 「あえてやらない」。見放すのではなく、手を出さずに見る
    • やらせる → 失敗する → 一緒に振り返るの順番
    • 手を出したくなる瞬間は必ず来る。そこは社長本人の課題
    • 社長が現場にいる間、社長の仕事は止まっている
    • 任せるが、放置はしない。週1回、必ず向き合う

    明日、1つだけでいいので、手を出すのをやめてみてください。

    そして、育たないとき「うちの社員のレベルが低いからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

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