面倒を見る優しさが、部下の成長を奪っています

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部下が、なかなか育たない。

任せたいけれど、任せると心配で、結局自分が出ていく。

そして、いつまでも自分がいないと回らない。

僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。この状態の社長さんは、例外なく面倒見がいい人です。

そして、そこに原因があります。

面倒を見ることが、そのまま成長の機会を奪っています。


ある社長が、自分で気づきました

相談に来られた、社員数名の会社の社長さんの話です。

その方は、部下の商談にほぼ毎回、同行していました。

理由は、まっとうです。自分が一緒に行けば、うまくいくから。そして、その場で教えられるから。

ところが、ある日ご自身でこう書いてこられました。

「同行することによって、成長する機会を奪ってしまっている可能性もある」

これ、僕が指摘したことではありません。ご本人が、自分で気づいたんです。

そして、この一文を書ける社長は、実はそう多くありません。


なぜ、同行すると育たないのか

理由は単純です。

社長がいると、部下は考えなくなるからです。

これは、やる気の問題ではありません。当たり前の反応です。

隣に答えを持っている人がいるなら、自分で考えるのは非効率ですよね。分からなくなったら振り返ればいい。判断が要る場面では、目で合図すればいい。

その場は、確実にうまくいきます。

でも、そこで部下が使ったのは「考える力」ではなく「頼る力」です。

そして、この状態が何年も続くと、どうなるか。

5年目の部下が、1年目と同じ判断力のままになります。

社長は「まだ任せられない」と言います。でも、任せなかったから育っていないんですよ。順番が逆になっているんです。


「あえて、やらない」

その社長さんが決めたことは、シンプルでした。

今までサポートしてきた部分を、あえてやらない。自分で考えさせる。どうしたほうがいいかを考えさせたうえで、ミーティングを重ねる。

「あえてやらない」。これがすべてです。

見放すのとは違います。手を出さずに、見ているんです。

そして、後ろにミーティングを置いている。ここが大事です。放り出すのではなく、振り返りの場を用意したうえで、先に手を離す。

順番が、こうなっています。

やらせる → 失敗する → 一緒に振り返る → また やらせる

多くの社長は、この最初の「やらせる」を飛ばして、いきなり教えます。だから何も残りません。


手を出したくなる瞬間が、必ず来ます

ただ、これは口で言うほど簡単ではありません。

やらせてみると、下手なんです。

自分がやれば5分で終わることに1時間かかる。言い方も甘い。詰めも甘い。見ていてイライラする。

そして、こう思います。

「貸してみろ」

ここで手を出したら、全部が終わります。その瞬間、部下は「やっぱり自分では無理だ」と学習します。

だから僕は、その社長さんにこう聞きました。

「手を出したくなる瞬間が、必ず来ます。そのとき、自分にどんな言葉をかけてあげれば、ぐっとこらえられそうですか」

これは、社長本人の課題なんですよ。部下の課題ではなく。

任せられないのは、部下の実力の問題ではありません。社長が我慢できるかどうかの問題です。


社長が現場にいると、社長の仕事ができません

もう1つ、忘れてはいけないことがあります。

その社長さんは、こうも書いていました。

同行を続けていると、新しい事業を立ち上げる時間が取れない。

そして、売上も停滞する。

つまり、面倒を見ることのコストは、部下の成長だけではないんです。

社長にしかできない仕事が、丸ごと止まっています。

新しい柱を作る。人を採る。方向を決める。外とつながる。これは部下にはできません。社長の仕事です。

その時間を、部下でもできる仕事に使っている。

優しさのつもりが、二重に損をしているわけです。


教えるより、失敗させたほうが安い

もう1つ、社長が抱えがちな誤解があります。

「失敗させたら、損をする」

たしかに、目先ではそうです。取れたはずの契約が取れない。お客さんに迷惑がかかるかもしれない。

でも、金額で考えてみてください。

1件の失注と、5年間伸びない人材。どちらが高くつくでしょうか。

しかも、失敗は取り返せます。社長がフォローに入ればいい。頭を下げに行けばいい。それは社長にしかできない仕事で、しかも一度で済みます。

一方、育たなかった5年は取り返せません。

だから僕は、こうお伝えしています。

失敗させるコストは、育成の費用だと思ってください。

研修に何十万も出す会社はたくさんあります。でも、目の前の1件を失敗させるほうが、はるかに濃い研修になります。

そして、そこで痛い思いをした人は、二度と同じ失敗をしません。教わっただけの人は、何度でもやります。

「自分の商店だと思ってやってくれ」

最後に、その社長さんが言っていた言葉を紹介します。

社員一人ひとりに、自分の商店をやっているつもりで働いてほしい。

これは、突き放しているのではありません。

「あなたの判断で決めていい」と渡しているんです。

そして、その意識をつけるために、週1回のミーティングを必ずやると決めていました。

任せる。でも、放置はしない。週に1回、必ず向き合う。

このバランスが取れたとき、人は伸び始めます。


まとめ

  • 面倒を見ることが、成長の機会を奪っている
  • 社長がいると、部下は考えない。やる気ではなく、当たり前の反応
  • 「あえてやらない」。見放すのではなく、手を出さずに見る
  • やらせる → 失敗する → 一緒に振り返るの順番
  • 手を出したくなる瞬間は必ず来る。そこは社長本人の課題
  • 社長が現場にいる間、社長の仕事は止まっている
  • 任せるが、放置はしない。週1回、必ず向き合う

明日、1つだけでいいので、手を出すのをやめてみてください。

そして、育たないとき「うちの社員のレベルが低いからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

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