メリットのハシゴを、一段ずつ上げてください

いいものだという自信がある。

だから、全部伝えたい。

そして、一気に話して断られます。

僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。断られる原因は、内容ではありません。

相手が、まだそこまで上がってきていないだけです。


人は、段を飛ばして上がれません

まず、仕組みを説明します。

相手の頭の中には、段があります。

① 自分に関係がある話だ② 自分にも困りごとがあるかもしれない③ それは、放っておくとまずい④ 解決する方法があるらしい⑤ この人に頼むといいかもしれない

売る側は、いつも⑤に立っています。

でも、初めて聞く相手は①にいます。

そこに向かって⑤の話をするから、届きません。

これは、内容の問題ではなく、位置の問題です。


メリットには、手前と奥があります

段を上げるときに、いちばん効くのがこれです。

メリットを2階建てにしてください。

① 本人が分かっているメリット② 本人が気づいていない、奥のメリット

例を出します。

使っていない宝石を買い取る商売なら、こうです。

  • ① お金になる(誰でも分かる)
  • ② そのお金で、大切な人と旅行に行ける

車なら、こうです。

  • ① 燃費がいい
  • ② 維持費が浮くぶん、お金を生む車になる

①だけだと、値段の比較になります。

②が見えた瞬間、話が変わります。


奥のほうは、言い切らないでください

ここが、いちばん大事なところです。

②を、こちらから言い切らないでください。

「この車は、お金を生む車です」

こう言われると、人は引きます。押されている感じがするからです。

そうではなく、相手が勝手にそう思うように置きます。

たとえば、こうです。

「月々の差額が、だいたい1万円くらいですね」

これだけ。

そして、相手が計算します。年間12万。5年で60万。

「あ、それなら旅行に行けるな」

自分で気づきました。

人は、自分で思いついたことにしか、本気になりません。


痛みがないと、上がりません

もう1つ、段を上げるのに必要なものがあります。

痛みです。

困っていない人は、動きません。当然です。

そして、世の中の商品の多くは、痛みが見えにくいです。

そういうときは、本人が気づいていない痛みに、そっと触れます。

たとえば、こうです。

「あの指輪、今どこにあるか思い出せますか」

……うまいですよね。

売り込んでいません。責めてもいません。

でも、聞かれた人は探し始めます。そして、思い出せないことに気づきます。

気づいた瞬間、それがその人の問題になります。


強すぎる痛みは、逆効果です

ただし、ここは加減が要ります。

痛みを強く突きすぎると、人は逃げます。

「このままだと、あなたは大変なことになりますよ」

こう言われて動く人より、耳を塞ぐ人のほうが多いです。

目安は、「これは何とかしないとな」と思える程度です。

眠れなくなるほどではなく、少し引っかかるくらい。

そして、うそはつかないでください。

作った痛みが本当でないと、後で必ず崩れます。そして、崩れたときに失うのは信用です。

触れるのは、実際にある痛みだけにしてください。


想像しやすいものから、話してください

もう1つ、実務的なコツです。

段を上げるとき、相手が想像しやすい話から入ってください。

たとえば、指輪やネックレスは、多くの人が身につけた経験があります。

だから「あの指輪」と言われた瞬間、具体的な映像が浮かびます。

一方、経験のないものは浮かびません。浮かばないものについては、痛みも感じられません。

だから、こう考えてください。

相手の記憶の中にあるものから、始める。

そして、そこから自分の商品につなげていく。

いきなり自分の商品から始めない。これだけで、届き方が変わります。


「できます」で止めないでください

最後に、いちばんよくある失敗を書きます。

紹介文が、こうなっていませんか。

「〜ができます」

これは、①で止まっています。

  • 買い取りができます
  • 修理ができます
  • 相談に乗れます

その結果、何が手に入るのか。

ここを1行足すだけで、段が1つ上がります。

そして、その1行があるかないかで、読んだ人が自分の未来を想像できるかどうかが決まります。


段を上げるのは、一度に1つです

最後に、実践の順序を書いておきます。

段を上げようとするとき、一度に2つ上げようとしないでください。

たとえば、初対面の相手に、痛みも奥のメリットも解決策も、全部その日に伝えようとする。

これをやると、相手は追いつけません。そして、押されていると感じます。

だから、こう考えてください。

今日は、1つ上げるだけでいい。

初回は「自分に関係がある話だ」と思ってもらえたら成功。それ以上を狙わない。

そして次に会ったとき、次の段に行く。

1回の面談で決めようとするから、無理が出ます。

そして、この考え方には副産物があります。

焦らなくなります。

今日決まらなくても、段が1つ上がっていれば前進です。

そう思えると、押さなくて済みます。そして押さない人のほうが、結果的に決まります。


まとめ

  • 相手は①にいる。売る側は⑤にいる
  • 断られるのは内容ではなく、位置の問題
  • メリットは2階建て。分かっているものと、奥のもの
  • 奥は言い切らない。相手に気づいてもらう
  • 人は、自分で思いついたことにしか本気にならない
  • 痛みがないと動かない。気づいていない痛みに触れる
  • 強すぎると逃げる。うそはつかない
  • 相手の記憶にあるものから始める
  • 「できます」で止めず、その結果を1行足す

自分の紹介文の「できます」に、その先を1行足してみてください。

そして、断られたとき「商品が弱いからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

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