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    傾聴には、3つの型があります

    「話を聞くのは得意なほうです」

    そう思っている人ほど、実は相手が話してくれていないことがあります。

    うなずいている。相づちも打っている。それなのに、当たり障りのない話で終わってしまう。深いところまで降りていかない。

    僕は起業して12年、500名を超える経営者の方と向き合ってきました。そのうえで断言できます。

    話しやすい空気は、意識の外側で作られています。

    だから、気持ちだけでは足りません。型が必要です。


    その1:同じ言葉で、そのまま返す

    一番簡単で、一番効くのがこれです。

    相手が言った言葉を、そのまま返す。

    「高校のときにですね」と言われたら、「高校なんですね」と返す。

    これだけです。拍子抜けするくらい単純ですよね。

    でも、ここに落とし穴があります。言い換えてはいけません。

    相手が「売上が低迷していて」と言ったのに、「売上が下がっているんですね」と返す。意味は同じに見えますが、その人の中では別の言葉なんです。

    「低迷」を選んだのには理由があります。じわじわ続いている感じ、抜け出せない感じ。その人の実感が、その一語に入っている。

    それを「下がっている」に変えると、実感の部分がごっそり落ちます。

    そして怖いのが、その違和感は口に出ません。顔に出ます。

    「あ、この人には伝わってないな」と、相手が静かに判断して、そこから先の話が浅くなる。本人も、なぜ話す気がなくなったのか説明できません。

    言葉を返すのが難しければ、うなずきだけでもかまいません。「聞いていますよ」が伝われば、それでいいんです。


    その2:相手のスピードに、合わせる

    声のトーン、大きさ、話す速さ。これを相手に合わせます。

    早口の人には、こちらも少し早めに。「そうなんですね、はいはい」とテンポよく。

    ゆっくり話す人に、早口で返してはいけません。それだけで、相手は置いていかれた感じになります。

    呼吸を合わせると言ったほうが、近いかもしれません。

    僕はサラリーマン時代、クレーム対応の部署にいました。社内で「特殊部隊」と呼ばれていた場所です。ヤクザみたいな勢いで怒鳴り込んでくる方も、普通に来ます。

    そこで体で覚えたのが、これでした。

    興奮している相手には、一度こちらも合わせる。

    最初にやりがちなのは、「まあまあ、落ち着いてください」です。これは火に油なんですよ。落ち着けと言われて落ち着いた人を、僕は一人も見たことがありません。

    だから、まず合わせます。相手の勢いに、こちらのトーンを寄せる。それから、少しずつ速度を落としていく。

    すると、相手も一緒に降りてきてくれます。

    先に落ち着かせようとするのではなく、一緒に降りる。この順番です。


    その3:仕草を、少しだけ真似る

    相手が足を組んだら、こちらも自然に組んでみる。相手の目線が下がったら、一緒に下げる。

    これも、無意識の領域に効きます。

    やりすぎると気持ち悪いので、あくまで自然に。似ている人には気を許すという、それだけの話です。

    3つの中では一番おまけ的な位置づけですが、覚えておくと、相手が黙り込んだときに役立ちます。


    実は、座る位置が一番大きい

    3つの型よりも、もっと手前で決まってしまうことがあります。

    どこに座るかです。

    四角いテーブルで、真正面。この配置は、それだけで威圧感が出ます。相手は無意識に身構えます。

    思い出してほしいんですが、カウンターで飲むと、なぜか話が弾みませんか。

    同じ人と、同じ時間、同じ話をしているのに、正面で向き合うより明らかに話が出てくる。

    あれは偶然ではありません。目を合わせ続けなくていいからです。正面だと、視線を外すことが「そらした」ことになる。横並びなら、前を見ているだけで自然に外れます。

    人は、逃げ場があるほうがよく話すんですよ。

    だから僕は、大事な話ほどカウンターを選びます。スペースがなければ、自分の体や膝を少しずらすだけでもいい。

    セミナーの椅子も、まっすぐには置きません。必ず少し斜め、交互にします。僕のセミナーに、まっすぐな椅子は一つもありません。それだけで場の空気が変わります。


    ただ、これ全部より大事なことがあります

    ここまで型の話をしてきて、ひっくり返すようなんですが。

    姿勢がなければ、この3つは全部死にます。

    どれだけ上手にオウム返しができても、「早く決めてくれないかな」と思いながらやっていたら、伝わります。逆に、本当にその人のことを思っていれば、多少ぎこちなくても伝わるんですよ。

    以前、受講生同士でこんなワークをやったことがあります。

    1分間、片方が少しつらかった話をする。もう片方は、わざと聞かない。目も合わせない、あくびをする、興味なさそうにする。

    そのあと、話し手に感想を聞きました。

    「自分で自分に言っている感じで、全然話が出てこなかった」

    たった60秒です。

    次に立場を替えて、今度はきちんと聞いてもらう。うなずいて、同じ言葉を返して、一緒に驚く。すると、こうなりました。

    「情景が頭に浮かんで、もっと伝えたくなった」「時間の流れ方が、全然違った」

    同じ1分なのに、です。

    聞かれ方ひとつで、相手の中の世界がここまで変わる。だから僕は、テクニックの前に姿勢の話をします。


    姿勢を持つと、こんなことが起きます

    もう1つ、実際にあった話を。

    フロントセミナーで、明らかに態度の違う方がいました。ずっとスマホを見ている。

    昔の僕なら、その人にイライラして、そちらばかり気にしていたと思います。

    でもその日は、正直に言いました。

    「今日、なんだか気持ちが違うのであれば、この場で退席いただいても大丈夫ですよ」

    これは嫌味ではありません。本気で来ている人の時間を守りたかった、それだけです。

    そうしたら、思ってもみないことが起きました。

    隣に座っていた方が、その場で申し込まれたんです。セミナーが始まって、まだ15分でした。

    「この人が本気でやっているのが分かった」と、後で言われました。

    さらに、退席を促した本人からも、後日メールが来ました。

    「大変失礼しました。すごく感動しました。お金が貯まったら、先生のところに行きます」

    誰に向かって何をするのかを守る。その姿勢そのものが、一番強いメッセージになることがあるんですよね。

    そしてもう1つ。場に一人「聞かない人」がいても、そこに引っ張られないでください。

    その一人にイライラして場の空気を汚すと、ちゃんと聞いてくれている9人が犠牲になります。見るべきは、その9人です。


    まとめ

    • 同じ言葉で返す。言い換えると、実感が落ちて違和感が顔に出る
    • できなければ、うなずきだけでいい
    • 相手のスピードに合わせる。興奮している人にも、まず合わせて一緒に降りる
    • 仕草を少しだけ真似る。やりすぎない
    • 座る位置を変える。真正面を避けて、カウンターか、体を少しずらす
    • 姿勢がなければ、全部死ぬ
    • 聞かない一人に引っ張られない。残りの9人を見る

    いきなり全部はできません。まず、うなずきからでいいんです。次に「それは大変でしたね」と一言返せるようになる。1つずつ積んでいけば、必ず身につきます。

    そして、相手が話してくれないとき「自分に人望がないからだ」と思い込みがちですが、たいていの場合、原因はもっと手前にあります。

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